コロナ禍、老後に待ち受けるのは貧困? 世代超える年金不安 衆院選鹿児島

 2021/10/27 08:20
 老後を支える公的年金制度。現役世代が納める保険料や税金が財源だが、少子高齢化により財政は年々厳しさを増している。「本当に受け取れるのか」「年金だけでは生活が大変」。衆院選を前に、鹿児島県内では若い世代に加え、高齢者も不安の声を漏らす。専門家は、新型コロナウイルス禍で保険料を払えなくなった人が将来、老後の貧困に直面するのではと危ぐする。

 「自宅で暮らせなくなったら希望する高齢者施設に入れるか心配」。年金を頼りに妻と二人で暮らす鹿児島市の池田芳宏さん(80)は語る。現役時代、住宅ローンなどで預貯金に回す余裕はなかった。「今のところ大きな病気もなく、つつましく過ごす分には何とかなっている」としながらも不安は尽きない。

 「2階建て」とされる公的年金は、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金と、会社員や公務員が加入する厚生年金からなる。特に国民年金は少子高齢化の影響が大きく、2004年に導入された「マクロ経済スライド」によって給付水準が徐々に引き下げられる見込みだ。

 課題となっているのが自営業者ら国民年金のみの支給世帯。年金額は加入期間によって異なり、21年度は40年間支払っても月6万5075円。19年度の平均受給月額は約5万6000円で「生活が苦しい」との声が広がる。

 支え手側となる若い世代も懐疑的だ。

 「自分事としてまだ考えにくいが、将来受け取れないだろうなとは思う」。ゼミで社会保障を学ぶ鹿児島大学法文学部3年の前迫遼さん(21)はため息をつく。3年の草留僚太さん(22)は「退職後に本当に安心して暮らせるようになるなら、働く間に多めに支払いたいのだが」と話す。

 年金を巡っては、自民党総裁選で争点の一つになった。河野太郎行政改革担当相(当時)が、国民年金を税金で賄う「最低保障年金」を主張したが、最低保障に否定的な岸田文雄首相が誕生した。衆院選では、各党が持続可能な年金制度を掲げ改革や見直しを訴えるものの、安定運用の道筋は見通せない。

 鹿大法文学部の伊藤周平教授(61)=社会保障法=は、コロナ禍で国民年金の月額保険料(現在1万6610円)を支払えない人が増えていると指摘。納付免除は減額支給につながるため、老後の貧困を招く恐れが高いと警鐘を鳴らす。

 伊藤教授は「法人税や所得税などを財源に国民年金は税金で保障する仕組みが必要。実現には税制改革が不可欠だ」と主張。制度が複雑なことも不安の要因とし「国民に分かりやすくすることが信頼回復に欠かせない」と訴えた。
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