拉致問題 繰り返される「一刻も早い解決」 被害者家族「選挙に利用されている」

 2021/10/30 09:00
 31日投開票の衆院選で論戦が繰り広げられる中、北朝鮮による拉致問題が置き去りになっている。鹿児島県内4選挙区の候補者が拉致解決に向けた道筋や具体的な取り組みに正面から触れることはなく、救出を待ち望む被害者家族らは「政治家自身がもっと真剣に考えて」と訴える。

 選挙期間になるとブルーリボンのバッジを着ける、「一刻も早い解決を」と聞こえがいい言葉ばかり繰り返す-。1978年8月、日置市の吹上浜で拉致された市川修一さん=失踪当時(23)=の兄、健一さん(76)=鹿屋市輝北=は「選挙に拉致が利用されている」と思えるような場面を見るたび、やるせなさを感じてきた。

 候補者10人の第一声を伝える新聞紙面を眺めても「拉致」を巡る発言はない。「外交の最重要課題であるはずが、拉致問題は置き去り。演説で触れてくれるだけでも有権者の関心を高められるのに」と悔しさをにじませる。

 岸田文雄首相とは公示前日の18日に面会し、「条件を付けず金正恩総書記と向き合う」との決意を聞いた。被害者5人の帰国から来年で20年。「未曽有の人権侵害事件をどう解決するのか。主権国家としての証しを見せてほしい」

 北朝鮮に拉致された可能性が拭えない特定失踪者の田中正道さん=当時(44)=の妹、村岡育世さん(71)=霧島市国分=は「政治家が拉致について何も語らないのがもどかしく、つらい」と話す。

 田中さんは93年6月、友人に「今から仕事に行く」と言い残し千葉県習志野市で消息を絶った。両親を亡くしただ一人の妹を思いやる心配性で優しい兄。「兄ももう73歳。元気なうちに何とか会いたい」と願っている。

 71年12月に行方不明となった特定失踪者の園田一さん=当時(53)、トシ子さん=同(42)=夫妻の長女、前山利恵子さん(73)=鹿屋市新川=は「コロナ対策が優先されるのは理解するが、私たちは政治に頼るしかない。家族に寄り添い、自分ごととして動いてもらえないだろうか」。