非正規職員が勤務中死亡 勤務管理ずさん、2年過ぎても補償審査始まらず 屋久島町
2021/11/12 07:15

田代健さんをまつる仏壇。遺族は毎日三食欠かさず供えている=屋久島町宮之浦
死亡から2年経過しても審査が始まっていないのは異例。町の雇用主としての責任が問われそうだ。
男性は同町宮之浦の田代健さん=当時(49)。町営の長峰牧場(小瀬田)で牛を管理していた。19年8月8日夕方、牧場の取水口近くで倒れているのが見つかり、搬送先の病院で死亡が確認された。死因は不詳。
町は田代さんと1日8時間・週40時間の雇用契約を締結。勤務時間の管理にタイムカードなどを使わず月1回の日誌提出による自己申告制を採っていた。田代さんの仕事中の死亡を認め、同年夏、地方公務員災害補償基金鹿児島県支部(鹿児島市)に照会。業務日誌などを基に協議を重ねた。
20年3月、同支部から「客観的資料で確認できない」として、公務災害の審査対象ではないといった趣旨の判断を伝えられた。一連のやり取りでは、田代さんの1日当たり労働時間を報告し直すなど町の労務管理がずさんだった。
遺族は同年6月、主に民間労働者に適用される労災保険を申請。鹿児島労働基準監督署(同)からは労災保険でなく、公務災害の審査対象に該当するとの連絡を受けた。
両機関の判断が割れる中、町は21年5月、「遺族の希望」を理由に公務災害申請の請求書などを同支部に送付。同支部は「審査の対象者になるか改めて確認中」としている。
町産業振興課の鶴田洋治課長(57)は田代さんの勤務時間を管理できていなかったと認めた上で「同僚らに聞き取って訂正した。結果的に週合計が(町職員の所定労働時間を超える)40時間となり常勤性があるはずで、公務災害の審査対象と認めてほしい」と話す。
■遺族「生きた証の仕事、なぜ認められない」
「審査が進まないのは非正規だからか」。田代さんの遺族は憤りを隠さない。
母イツエさん(79)は毎朝5時15分、健さんが出勤前に支度をしていた時間に合わせ、仏壇に食事を供える。2年間欠かさず朝昼晩の三食を用意。「愚痴一つ言わず、ほぼ休みなく、朝から夕方まで必死に働く優しい子だった。生きた証しの仕事がなぜ認められないのか」と涙を流す。
田代さんと2人で町営長峰牧場を管理していた片山吉清さん(54)=同町宮之浦=によると、田代さんが亡くなる数日前、2人とも体調を崩していた。上司に報告したが、代わりの職員を充てるなどの処置はなかった。
2019年8月8日、体調が悪かったため朝の作業後に早退していた。「共倒れしないように頑張ろうと話していたばかり。劣悪な働き方が死につながったのではないか」と話す。
田代さんの死亡推定時刻は同日午前11時ごろ、発見されたのは同午後6時ごろだった。イツエさんは「健が1人でなかったら、倒れた時に誰かが少しでも早く見つけてくれたのではないか」と悔やんだ。
■雇用主の責任果たす自覚は?
地方自治総合研究所(東京)の上林陽治研究員の話 雇用主は労働基準法や労働安全衛生法に基づき、雇用者にどの補償が適用されるかを事前に示し、勤務時間を正確に把握、記録しなければならない。事故や過労死といった問題が起きないよう、勤務時間を管理するなど労働環境を整えるのは当然だろう。田代さんは公務災害か、労災かのはざまに置かれ、救済されていない状況。屋久島町は雇用主としての責任を果たすとの自覚がない。
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