【連載・非正規公務員に明日はあるか①】待遇改善図った「会計年度任用職員」 実態は雇い止め、パート転換で賃金下がる

 2021/11/20 08:35
会計年度任用職員制度をテーマに、現状を話し合う勉強会=7月、鹿児島市の鹿児島県教育会館
会計年度任用職員制度をテーマに、現状を話し合う勉強会=7月、鹿児島市の鹿児島県教育会館
 地方自治体で働く非正規公務員を「会計年度任用職員」として扱う制度がスタートして約1年半が経過した。「嘱託」や「臨時」などあいまいだった立場を明確にし、ボーナスの支給など待遇改善を図る狙い。だが、現場からは「賃金が下がった」「雇い止めされた」などの声が絶えない。地方自治を支える人々に何が起こっているのか。

 「無駄を減らさないといけない。業務は外務委託する。市民のためだ」。上司の言葉が胸に突き刺さった。県内のある市役所で会計年度任用職員だった50代女性は今年3月、約20年働いた職場を辞めた。

 親の世話をしながら嘱託として勤務。月の手取りは15万円にも届かなかったが、昨年4月に任用職員になり、初めてボーナスをもらった。「未来に明るさを感じたばかりだった。新型コロナ禍でのリストラ。悔しく、悲しい」とつぶやく。

 医療福祉の専門知識が必要な仕事で、新しい情報を学び頑張ってきた。「自分の存在はこれほど軽かったのか」。失望で目の前が真っ暗になった。パートタイムだったため退職金は出なかった。

■更新が不安

 別の市役所で約20年勤める女性は昨年春、フルタイムからパートに切り替えられた。10万円ほどあった手取りの月給は約2万円減った。

 食費を削っても赤字となる月は貯金を切り崩す。1人暮らしで持ち家はあるが「余裕は全くない。子育て中の人であれば生活できない」とため息は深い。

 新制度で1年ごとの採用が厳格化された。10年以上一緒に働いた同僚は、新制度への切り替えと同時に面接で落ちた。持病で通院が欠かせない女性も不安が尽きない。

 「自分も更新されないのではと不安。職場で下手なことは言えない」。取材に応じた人々は業務内容や年齢すら明かすことをためらう。

■パート転換進む

 県市町村課によると、新制度を導入した2020年4月、43市町村の任用職員は計1万1608人。正規職員計1万7954人の6割超に上る。警察や教育などを除いた県知事部局の任用職員は1460人で、正職員4921人に対し約3割(21年4月)。任用職員は公共サービスを支える存在となっている。

 新制度はパートタイムにボーナス、フルタイムにはボーナスや退職金を支払うことが明確にされた。待遇は改善されるはずだった。だが、実際にはフルタイムからパートへ転換が進み、市町村の任用職員の9割以上、県知事部局も全員パートで任用している。

 その結果、賃金も抑えられてしまった。県職労によると、新制度導入に伴い、任用職員がいる約170職種のほとんどで日額・月額報酬が下がった。

 県の任用職員でつくる労働組合「会計年度任用職員評議会」の上野和夫議長(67)は「都合よく使われるようになっただけで、特に若い人は将来の展望が描けない。制度のメリットが実感できない」と話す。(つづく)