【連載・非正規公務員に明日はあるか⑤】専門職の正規採用を 保育や介護、DV相談支援 公共サービスの低下懸念
2021/11/24 10:35

地方自治総合研究所・上林陽治研究員
会計年度任用職員制度は当初の狙いと違い、不安定な雇用を固定化する危うさをはらむ。制度の課題や今後のあるべき形について、非正規公務員問題に詳しい地方自治総合研究所(東京)の上林陽治研究員に話を聞いた。
◇◇◇
全国市町村で働く公務員の3分の1が非正規だった。新制度はその実態に合わせて、有期雇用や非常勤の公務員を法制化した。目的に処遇改善がうたわれているものの、非正規の使い勝手をよくしたいという本音があったのではないか。
ボーナス(期末手当)が出るようになり「改善した」との声もあるが、正規との圧倒的な格差は残されたままだ。任用職員の多くが行政の最前線で公共サービスを担っている一方で、管理業務や決定・処分に携わってはならないとされ、役割が限定された。
国や自治体は決定や企画立案、処分などができる公務員さえいればよく、公共サービスの大半は正職員がやる必要はないと考えているように思えてならない。だが、保育や看護、介護、相談支援と、ただでさえ不足する公共サービスを、賃金水準の低い任用職員で補うことには無理がある。
負の影響がはっきり表れたのが保健所業務だと思う。行政改革で統廃合され、保健師も大きく減らされた。その結果、コロナ禍でPCR検査も十分できず、職員は疲弊を極めた。非正規化を進める市町村に「公共サービスの低下は覚悟の上か」と問いたい。
医療・保育、ドメスティックバイオレンス(DV)の相談など、住民支援の窓口に立っているのは非正規の女性たちだ。諸外国は男性より女性の公務員が多い。だが、日本はまだ女性の仕事が十分に認められていない。非正規問題から見えてくるのはこの国の姿。非正規の女性にもっと目を向けていくべきだ。
総務省などのデータを基に鹿児島の市町村の非正規の割合を独自試算した。「非正規率」が40%以上の市町村は全43市町村の6割に上り、50%を超えるところもある。特に町村は全国平均より高く、鹿児島は「非正規大国」と言える。
まずは長年、専門職で働く人を正規化することを提案したい。すでに児童相談所が動き出しており、専門職の正規採用を広げている。働く人を大事にできる仕組みを作るために、現場で何が起きているのか知ってもらうことが大切だ。もっと声をあげてほしい。
【略歴】かんばやし・ようじ氏 1960年東京都生まれ。2007年から公益財団法人地方自治総合研究所研究員。著書に「非正規公務員のリアル」(2021年)ほか。
(おわり)
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