「過労死は使用者による犯罪行為」 NHK記者の娘を亡くした両親の訴え 「政治は身近な命守る方策を」

 2021/11/28 08:37
過労死をなくすため講演活動を続ける佐戸未和さんの父守さん(左)と母恵美子さん=東京都
過労死をなくすため講演活動を続ける佐戸未和さんの父守さん(左)と母恵美子さん=東京都
 2013年に過労死したNHK記者・佐戸未和さん=当時(31)=の両親が、悲劇を繰り返すまいと全国で講演活動を続けている。過労死等防止啓発月間の11月も、広島や高知に足を延ばした。東京都で暮らす両親の守さん(70)、恵美子さん(72)に活動への思いを聞いた。

 -活動はいつから。

 「過労死を公表した2017年以降、厚生労働省主催のシンポジウムや高校や大学での出前授業で体験を伝えてきた。娘の初任地・鹿児島にも出向くなど、来月で90回を超える。未和の生きた証しを残したい。その一心で続けている。一方でNHKは、遺族が求める詳細な調査報告書を作成せず、当時の経営トップに報告もしていない。原因究明や検証に後ろ向きな姿勢に不信感が募る」

 -会場での反応は。

 「企業の人事担当者が特に熱心だ。ただ社会全体で関心が高まっている状況とは言えない。悲しい死をなくすための活動だが、一方で毎年過労や過労自殺で亡くなる方がいる。やるせない気持ちだ」

 -関心が高まらない背景は。

 「労働を美徳とする日本的風土が根底にある。『残業100時間、200時間は当たり前』と言ってはばからない世代が組織中枢から抜けるには時間がかかる。法制度の整備も必要だが、先月の衆院選でも働き方改革の議論が深まったとは言えない。格差是正や憲法改正も重要なテーマだが、まずは身近な命を守る方策を考えてほしい」

 -新型コロナウイルスの影響で新たな働き方が広がりつつある。

 「在宅ワークは仕事とプライベートの境界が曖昧になり、一面では働く時間が増えている可能性もある。一番の問題は周囲の目が届きにくいことだ。表情や顔色の変化に現れる心身の異変に同僚や上司が気づけず、深刻化する恐れがある」

 -過労死を減らすには。

 「過労死は使用者による犯罪行為、という認識が広がることが大切だ。表面化しているのは氷山の一角で、企業や組織を気遣って声を上げられない遺族もいると聞く。犯罪に対して社会が断固とした手が打てない現状に怒りさえ感じる」

 「合理化・効率化が進み、労働者1人当たりの負荷が増える中、過労死は許されないと声を上げ続けなければいけない。特に若い人には、社会に出る前に遺族の声などを通して現実を知り、自分の身を守ってほしい」