「水道のように蛇口閉められない」 酪農家 悲鳴、生乳 廃棄の危機 学校給食止まる年末年始 供給過剰の恐れ

 2021/12/21 12:28
1日2回、約60頭から搾乳する酪農家の牛舎=南九州市
1日2回、約60頭から搾乳する酪農家の牛舎=南九州市
 全国的に牛乳や乳製品の原料となる生乳の供給過剰が懸念され、鹿児島県内の酪農業界も廃棄の危機に直面している。需要が大幅に落ち込む年末年始を控え、農家は牛乳の消費拡大を呼び掛ける。

 生乳の需要は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、昨年から飲食店向けが減っている。一方、今夏は長雨などの影響でそれほど気温が上がらなかったため搾乳量が多かった。

 このため、加工品の脱脂粉乳やバターの在庫がだぶついている。全国の酪農協などでつくるJミルク(東京)によると、学校給食がストップする年末年始にかけて、生乳生産量が全国の乳製品工場の処理能力を約5000トン上回る恐れがある。大量廃棄につながりかねない状況だ。

 農林水産省の統計では、2020年の県内の生乳生産量は7万8207トンで、九州では熊本、宮崎に次ぎ3番目。県内以外に関西圏にも出荷している。

 Jミルクなどは鹿児島県酪農協を含む会員に、生乳の出荷量を抑えるよう要請。乳牛約100頭を飼育する南九州市川辺の大渡康弘さん(46)は「水道水のように蛇口を閉めて止まるものではない。1日2回搾乳しないと牛が病気になる恐れがあり、減らすのには限界がある」と嘆く。コロナ下で価格が安い加工用に回す生乳の割合が増え、経営も圧迫されている。

 乳牛は生まれてから搾乳できるようになるまで約3年かかるという。霧島市牧園で約170頭を飼う池田伸平さん(54)は「増頭には時間がかかる。一時的な供給過剰で頭数を減らしたり農家が廃業したりすれば、需要が伸びる夏場に対応できなくなる」と指摘する。

 生乳の廃棄を回避しようと、農水省や業界団体は消費者に乳製品の購入を促すキャンペーンを展開している。大渡さんは「九州でも廃棄の懸念が高まっている。特に元日は牛乳の消費量が極端に落ちる。飲むのはもちろん、ぜひ料理でも使ってほしい」と訴えている。
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