港町 消えた「音の風景」 新年の風物詩? 騒音? 元日午前0時の汽笛 今年は聞かれず 鹿児島本港区

 2022/01/13 20:35
多くの離島航路がある港町・鹿児島市。海と市街地が地理的に近い=2020年11月撮影
多くの離島航路がある港町・鹿児島市。海と市街地が地理的に近い=2020年11月撮影
 「元日午前0時、新年を告げる船の汽笛が聞こえていたのに、今年は聞こえなかった」。鹿児島市の読者からこんな疑問が寄せられた。取材を進めると、「新年の汽笛」にも環境変化の波が押し寄せていた。海に近い街の“音の風景”。みなさんはどう思いますか。

 27社が加盟する県旅客船協会(泉町)によると、本港区に商業施設ドルフィンポートが開業した2005年、運営会社から「新年イベントに合わせて汽笛を一斉に鳴らしてほしい」と要請があった。それを受けて、本港区や新港区に停泊する各社の船が新年の汽笛を毎年鳴らしてきた。

 しかし、20年4月に同施設が営業をやめ、多くの船が21年から汽笛を止めた。汽笛を続けている奄美、十島航路のフェリーの一部は今回は運航中で鹿児島港にいなかった。桜島フェリーは苦情を受け、10年ほど前にやめた。22年の年明け、汽笛が聞こえなかったのは、こうしたいくつかの事情が重なった結果だった。

 同市清水町の自営業、宮内今日子さん(58)は、長年汽笛を合図に新年を祝ってきた。「ベランダで待っていたのに聞こえず、寂しかった。日本各地で震災や豪雨災害があった年も汽笛が聞こえ、元気を出していこうと励まされた」と話す。

 横浜港ではこの年明けも氷川丸をはじめ停泊中の船が汽笛を鳴らし、「除夜の汽笛」が風物詩となっている。「桜島と美しい海、港が広がる鹿児島の街に新年を祝う汽笛はふさわしい感じがする」と宮内さん。

 ドルフィンポート以前から船会社の判断で新年の汽笛を鳴らしていたものの、停泊中は燃料も必要で、手間も人手もかかる。さらに年1回とはいえ、「騒音ととらえられないか」と配慮する傾向も強まっている。

 「離島航路をもつ鹿児島ならではの歴史があり、迷惑でなければ続けたい思いはある」と県旅客船協会の平田勇夫事務局長。同じ音でも、楽しみにする人がいれば、騒音と感じる人もいる。悩ましい。
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