「MaaS」知ってる? 交通、旅の情報一括検索 九州で導入拡大 目的地へ最短ルート、チケット決済、観光案内 一つのアプリでOK

 2022/04/11 11:11
バスの乗り降りはデジタルチケットを見せるだけ=福岡県糸島市
バスの乗り降りはデジタルチケットを見せるだけ=福岡県糸島市
 スマートフォンアプリで目的地までの最短ルートの検索やチケットの決済ができるサービスが九州各地で広がっている。「MaaS(マース)」と呼ばれる次世代交通サービスの一環だ。参加する事業者は、アプリを通して協力関係を築き、街の活性化や公共交通の維持を目指している。九州北部の先行事例を体験し、アプリ導入の効果や課題を探った。

 3月下旬、福岡県西部の糸島市に出掛けた。鹿児島中央駅から博多駅までのルートを、MaaSアプリ「マイルート」で検索。示された選択肢から新幹線のボタンを押すと、JR九州のネット予約につながった。

 博多駅からは、海沿いの車窓を眺めたくて高速バスに決定。クレジットカードを登録すると、さまざまなデジタルチケットも買える。バスに揺られ1時間、画面の「糸島半島周遊チケット」(1800円)を運転手に見せ、市中心部の筑前前原駅近くに降り立った。

 観光地は同駅から離れた半島北部に集中する。夕日スポットとして有名な桜井二見ケ浦に行こうと、再びアプリを立ち上げると1番手に出てきたのは路線バスからタクシーに乗り継ぐルートだ。連携する外部アプリで配車は可能だが、あいにく周辺には不在。2番手のカーシェアを予約した。

 アプリではお薦めスポットも紹介しており、人気のカフェへ。自家焙煎コーヒーをゆっくり味わい、駅へ戻った。2時間のドライブで1600円。レンタカーより安く抑えられた。

 ルート検索やチケット購入、観光案内が一つのアプリで完結するのは便利だ。ただ、交通手段によっては予約に別アプリの追加が必要で、煩雑さもある。

 糸島地区では、県外観光客の呼び込みなど地域活性化を目指し、2020年10月に41社でプロジェクトを設立、21年2月にマイルートを導入した。バスやタクシー事業、自動車販売を手がける昭和グループ(福岡市、SEEDホールディングス)が取りまとめ役を務める。

 永利勇気・モビリティ事業推進室長は「MaaSにはまだまだ検討課題が多い」と指摘。その一つとして利用者データの取得、活用が不十分な点を挙げる。アプリは個人の属性を入力せずに利用できるため、デジタルチケットは販売枚数しか把握できない。「性別や年代、居住地域などが分かれば今後のチケットの発売などマーケティングに生かせるはず」という。

 一部のレンタサイクルなど、まだアプリに反映されていない交通サービスも少なくない。「より多くの事業者が参加すれば、利用者により細やかなサービスを提供できる。事業者、利用者への認知度向上に努めたい」と話す。

■異業種連携の契機に

 西日本鉄道(福岡市)は2018年11月、マイルートを採用した。バスや鉄道の1日デジタル乗車券発売やリアルタイムの運行情報提供など乗客の利便性向上を狙った。アプリは今年3月で28万ダウンロードに達している。

 アプリ導入地域では、鉄道やタクシーなど参加企業が増加。北九州市の駅では、JRがダイヤを改正し西鉄バスとの乗り継ぎを改善するなど事業者間で協力する環境が整ってきたという。

 西鉄まちづくり・交通・観光推進部の阿部政貴課長は「バス運転手が減り、10年後の路線維持への懸念があった」と導入の背景を明かす。「マイルートをきっかけに今までライバル同士だったタクシー会社などとも連携し、交通網の維持に向けて話し合えるきっかけができたことは大きい」と意義を強調する。

【MaaS】「Mobility as a Service」の略。あらゆる交通手段を結び付けて地域課題を解決する取り組みを指す。全国では、高齢化地域での乗り合いバスやオンデマンド交通などの実証実験が進んでいる。複数の交通手段を組み合わせたルート検索を提供するアプリもMaaSの一環。トヨタ自動車グループが開発した「マイルート」は現在、九州では佐賀県、宮崎県など5県で利用できる。鹿児島県でも2022年度中に、同アプリなどを含めて実証実験を始める計画。