県都の一等地整備 県と市が連携不足? 鹿児島県→新体育館計画、市→スタジアム構想 議論見通せず…「街づくりがちぐはぐに」住民懸念

 2022/05/13 09:00
鹿児島県が新総合体育館の整備計画を進めるドルフィンポート跡地(右)と、住吉町15番街区=鹿児島市の鹿児島港本港区
鹿児島県が新総合体育館の整備計画を進めるドルフィンポート跡地(右)と、住吉町15番街区=鹿児島市の鹿児島港本港区
 鹿児島県は、鹿児島港本港区エリア(鹿児島市)での新総合体育館整備計画を着々と進めている。だが、街づくりの議論が不十分という見方は根強い。サッカースタジアム構想を持つ市が現行の配置案に異論を唱えるなど、県と市の連携不足も露呈。このままでは街づくりに影響すると懸念する声も出始めた。

 3月中旬、南日本新聞に載った鹿児島商工会議所の意見広告が各所で話題に上った。「本港区は鹿児島の発展の鍵を握る」と将来を見据えた街づくりの必要性を指摘。個々の施設整備に終始してはならない、という問題意識がのぞく。

 現体育館は築60年を超え、老朽化で建て替えを迫られている。しかし、候補地の選定過程などを巡って二転三転し、検討開始から既に12年以上たっている。

 県は有識者検討会の議論を踏まえて3月末、エリア内のドルフィンポート跡地南側に配置する基本構想を策定。最大245億円の事業費をかけ、6~7年後の完成を目指す。本年度は跡地の地盤調査などを行う。

 一方、市は跡地をスタジアム整備の3候補地の一つに位置付ける。年間約20試合で計14万人以上の来場を見込めるとし、コンベンション(会議)施設としての活用も想定。「稼げるスタジアム」とアピールする。

 だが、県の基本構想にスタジアムは盛り込まれなかった。跡地に近い住吉町15番街区への整備の余地は残されたものの、下鶴隆央市長は「跡地に建てさせないという意味ではないか」と懸念を隠さない。

 本港区エリアは天文館など中心地に近い県都の一等地。再開発を進める上で周辺との一体的な街づくりの議論を求める声は少なくないが、塩田康一知事は「先送りできない課題」と体育館整備を先行させる姿勢をにじませる。

 下鶴市長は4月、県や民間団体と共に街づくりを考える協議会を設ける意向を表明。これに対し塩田知事は、市のスタジアム構想がまだ具体的ではないことなどから設置に慎重な姿勢を示す。協議会が実現するかどうかは見通せない。

 天文館商店街振興組合連合会(天商連)の平岡正信代表理事(53)は、県、市が連携して議論を深めなければ街づくりがちぐはぐになると懸念する。「まずは市が住民らの声を聞きつつ、早急に具体案を固めてほしい」と求める。

 宮崎公立大学の有馬晋作学長(行政学)は、新体育館とスタジアムの構想を両立させるには「職員レベルの細やかな調整で詰めていく必要があるが、難しければトップダウンでの決定が現実的」とみる。本港区エリアと周辺の街づくりは「民間団体など第三者を入れて、内容をオープンにしながら進めることが大切だ」と指摘した。