医療的ケア児の長男、通園を始めると「表情が明るくなった」 たん吸引、胃ろう…児童福祉施設にサポート役の看護師を 鹿児島でも支援事業始まる

 2022/05/21 08:30
山元太惺ちゃん(中央)を見守る2人の看護師(左、右)と保育士(中央奥)=17日、鹿屋市の和光こども園(同園提供)
山元太惺ちゃん(中央)を見守る2人の看護師(左、右)と保育士(中央奥)=17日、鹿屋市の和光こども園(同園提供)
 たん吸引や人工呼吸器が必要な「医療的ケア児(医ケア児)」と家族に対する支援法が昨年施行され、鹿児島県内でも本年度から保育園や認定こども園で園児をサポートする看護師の配置を後押しする事業が始まった。関係者は社会参加の幅が広がることを歓迎。一方で相談機関の早期設置や通園支援を求める声も上がっている。

 「先生に絵本を読んでもらったり年の近い子どもと交流したりして表情が明るくなった」。鹿屋市の山元春季さん(26)は、4月から週2回、同市の和光こども園に通う長男太惺(たいせい)ちゃん(2)の変化を喜ぶ。

 筋力が低下する脊髄性筋萎縮症を患い常に人工呼吸器を着ける。日中は1時間ごとにたんの吸引、4時間ごとに胃ろうが必要で、日ごろは春季さんが付きっきりで世話している。

 児童福祉施設への看護師配置は原則、国が半額、県と市町村がそれぞれ4分の1負担する。県によると、本年度は3市町6人への配置を予算化しており、太惺ちゃんはその1人だ。

 園によると、通常は他の園児と別の部屋で保育士と遊んだり読み聞かせを受けたりして、他の園児と過ごす機会も設けるという。看護師2人を雇い、最低1人が見守る。主治医の指示に従い、たん吸引も行う。万全を期すため春季さんを非常勤で雇い、当面は太惺ちゃんのそばに詰める。

 常勤看護師の松本京子さん(62)は「医ケア児と関わるのは初めて。何かあったらとの不安はある。今は春季さんのやり方を見ながらサポートしているが、いずれは彼女が目を離せる時間を作れたら」と話す。



 大隅半島にある別の園には、就寝時や何かに集中したときに呼吸停止の恐れがある先天性中枢性低換気症候群の女児(4)が通う。看護師3人が週交代で勤務。6~7キロの人工呼吸器を背負い、友だちと遊んだり給食を食べたりして過ごす女児に寄り添う。母親(33)は「友だちと話す中で言葉を覚えたり食べ物の好き嫌いがなくなったり成長を感じる」と目を細める。

 ただ入園先探しは容易ではなかった。「電話で呼吸器を着けていると言った時点で断られた」。訪問看護師や保健師に相談し4園を見学、ようやく入園にこぎ着けた。今は週4回、往復約1時間、車で送迎。今後の生活に不安は尽きず「娘のことで常に相談できる場所があれば」とも感じる。

 支援法は、専門知識のある職員が家族の相談に応じ関係機関との連絡調整する「支援センター」の設置を都道府県に促す。本年度までに39カ所設置される見込みで、鹿児島県は「検討中」としている。

 近年、医ケア児のいる学校への看護師配置は進む。県によると、2021年度は公立小中学校7校に配置された。一方、20年の県調査によると、県内保育園・幼稚園・認定こども園を利用したいができない医ケア児は17人で、受け入れ体制の整備が課題となっている。

 和光こども園園長で、県医療的ケア児支援連絡協議会の平川明憲委員(42)は「看護師配置が事業化された意義は大きい」とした上で「入園前から看護師を雇って準備するのでその分も予算化してほしい」と言う。通園通学の送迎を保護者に頼る現状については「看護師が同乗する介護タクシーの活用など公的支援が不可欠。子どもにケアが必要だろうがなかろうが、保護者が同じように過ごせることが望ましい」と訴えた。

 ■医療的ケア児

 人工呼吸器や、腹部からチューブで胃に栄養を送る「胃ろう」、たんの吸引などが日常的に必要な子ども。動き回れる子から寝たきりの子まで状態はさまざま。受け入れ態勢の整った保育所や学校が少なく、親の負担の重さが課題。昨年9月施行の支援法は、ケア児の健やかな成長と家族の離職防止のため「社会全体で支える」ことを理念に掲げる。