福島第1原発処理水放出まで1年 1日130トンずつ増えていく 東電「海に流すしか打つ手ない」 目を奪う巨大タンク群 風評被害続く漁業・水産業者は「反対貫く」が…複雑な心境も
2022/05/23 13:30

高さ10メートルを超えるALPS処理水入りの保管タンク=福島第1原発(代表撮影)
身分確認や生体認証といった手続きを経て入構、専用バスに乗り込んだ。事故から11年。除染作業が進み、敷地約350万平方メートルのうち96%で防護服や防護マスクが不要になった。この日も私服の上からベストやヘルメット、簡易マスクの“軽装”が許された。車内に置かれた線量計を除けば、工事現場で作業員を運ぶ輸送車といった感じだ。
走りだしてすぐ目を奪われるのが高さ10メートル超の巨大なタンク群だ。溶融核燃料(デブリ)を冷やす水や、周辺を通過した地下水・雨水を集めた「汚染水」の放射性物質を、多核種除去設備(ALPS)を使って除去する。この「処理水」は1日平均約130トン(2021年度)にも上り、1000トン入りタンク1基が8日程度で満杯になる計算だ。
「海に流すしか打つ手がないというのが本音です」とは同行した東電担当者。タンクは1000基超まで増え、敷地面積は斜面や海岸部を除く設置可能エリアを徐々に圧迫。デブリ取り出しなど次の廃炉工程に向けた用地確保も必要で、「タンクの置き場はもうない」と主張する。
海洋放出に突き進む東電が準備を急ぐのが、処理水を沖合1キロ先まで流す「海底トンネル」の新設だ。すでに入り口部分となる「立て坑」の整備に着手、4月下旬には直径3メートルのシールドマシンを据え置いた。放出予定海域を遠くに望みながら、「設備工事着手に向けた地元自治体の同意が得られた後、速やかに取りかかる」と担当者。最新マシンを使えば、数カ月程度で掘り終わるという。
海洋環境への影響が最大の懸念となる。処理水にはALPSでは取り切れない放射性物質トリチウムが含まれる。人体への影響は小さいとされ、九州電力川内原発(薩摩川内市)など全国の原発で希釈され海に流されている。
東電は処理水を大量の海水で薄め、トリチウム濃度を国基準の40分の1未満にしての放出を計画する。それでも漁業者や水産事業者からは「事故直後のような風評被害を再び招く」との声が根強い。東電の高原憲一リスクコミュニケーターは「安全は十分に確保されることを説明し、根気強く理解を求めていくしかない」と話した。
■地元「沖縄の基地問題と同じ」「結局強行される」
東京電力福島第1原発の処理水海洋放出について、地元漁業者や水産業者は「反対を貫く」と口をそろえる。国主導で手続きが進む中、「基地問題に揺れる沖縄と同じように、地元がいくら声を上げても結局は強行される」と複雑な心境ものぞかせた。
事故後、福島県漁連は沿岸での操業を自粛。原発に近い相馬双葉漁協(相馬市、組合員846)では現在も対象魚種や出漁回数を絞り、検査で安全確認して出荷する限定的な操業が続く。長く風評被害にさらされており、立谷寛治組合長(70)は「海洋放出はさらに事態を悪化させる」と反対の立場だ。一方で、海洋放出は国策だとして「基地問題を抱える沖縄と同じ。いくら反対しても変わらない」と吐露する。
長期にわたって避難指示が出ていた浪江町の請戸漁港では2020年、9年ぶりに競りが再開された。これに合わせ工場を再建し、操業を再開した「柴栄水産」の柴強社長(55)は放出に反対とした上で、「かつてブランドと評された福島の水産業を復興させようと関係者は血のにじむような努力を続けてきた。その思いを無駄にしないよう、国は販売価格維持に向けた政策や補償を確実にやってほしい」と訴えた。
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