52歳で始めたハーモニカ。 誘ってくれた夫の死、肺がん手術…80歳になった今も「夫の分まで」吹き続ける

 2022/05/25 10:30
日本ハーモニカ賞を受賞した種子田衣井子さん=霧島市隼人町小田
日本ハーモニカ賞を受賞した種子田衣井子さん=霧島市隼人町小田
■日本ハーモニカ賞を受賞
 種子田 衣井子さん

 「音域は広くて持ち運びが楽。まるでポケットの中のオーケストラ」。鹿児島県の霧島市と姶良市の公民館などで約20年、ハーモニカを教えてきた。長年の普及活動が評価され、4月に県内で初めて「日本ハーモニカ賞」が贈られた。「元気なうちは魅力を広めたい」と張り切る。

 福岡県生まれ。20歳の時、高千穂峰で夫の一成さんと出会った。結婚後、夫の実家の霧島市隼人に移り住んだ。ハーモニカが得意な夫が「けいこをしないか」と隣近所に声をかけたのがきっかけで自身も吹き始めた。52歳だった。

 夫は公民館講座を引き受けるまでになったが、6年後に68歳で亡くなる。闘病中は代理で講師をしていたものの「私は素人。教室をたたむべきでは」と役場に相談した。「一から始めたからこそ、上から目線にならずに指導できる」と担当者が背中を押してくれた。「夫の分も頑張ろう」と決意し、教本を買いあさって独学で腕を磨いた。

 2021年、肺がんの切除手術を受けた。コロナ禍も重なって教室が開けない日が続いた。それでも術後1年の検査では異常がなく、「以前のように吹けるようになった」と喜ぶ。

 四つの教室で約50人に教えている。頼まれればいつでも演奏できるように、車には4本を常備する。「ハーモニカを通して多くの人と出会えた。夫がつないでくれた縁」と感謝する。

 お気に入りは「帰れソレントへ」。「孫が6人いるのに誰もハーモニカに興味がないのが残念」と笑う80歳。