米軍のコロナ検疫に「穴」 基地外に広がったが…自治体は要請頼り 日米地位協定の壁 事件事故時も 米無人機配備方針の鹿屋、対策は不透明

 2022/05/25 08:15
鹿屋市中心部の飲み屋街。住民は米兵との関わり方に気をもむ=24日午後7時すぎ、同市本町
鹿屋市中心部の飲み屋街。住民は米兵との関わり方に気をもむ=24日午後7時すぎ、同市本町
 米兵ら150~200人が1年間ホテルで暮らす-。防衛省が23日明らかにした海上自衛隊鹿屋航空基地(鹿児島県鹿屋市)への米空軍無人偵察機の一時展開計画は、駐留する米兵全員が基地の外で生活する。在日米軍基地がある各地の自治体では日米地位協定が壁となり、新型コロナウイルス感染症対策や事件事故捜査のトラブルが目立っている。鹿児島でどういった対策ができるか不透明だ。

 今年1月、沖縄と山口、広島の3県に新型コロナ「まん延防止等重点措置」が適用された。オミクロン株による第6波の始まりで、いずれも米軍基地の検疫の「穴」から外に広がったとされる。岩国基地(山口県岩国市)に隣接する広島県のコロナ対策担当課長は「日本の検疫体制は相当厳しかった。それが急に背後から襲われた」と話す。

 検疫の穴は、日米地位協定に起因する。米兵が米軍機で米軍基地から入国した場合、検疫は米軍任せとなるからだ。米軍は昨年9~12月の間、出入国時のPCR検査を免除していた。

 基地や周辺で感染症患者が発生した場合、衛生当局間で通報することになっているが、各県とも県内の陽性者をたどって基地由来と知った。そもそも米兵は国内感染者として扱われず、追跡調査できない。広島、沖縄両県の担当者は「情報提供と、日本と同じ水準の対策をお願いするしかない」と口をそろえる。

 要請頼りは事件事故の対応でも同様だ。沖縄県では復帰後の50年間で、凶悪事件が年平均約10件発生している。だが、身柄を引き渡さず、ヘリコプターが墜落しても捜査協力を拒否する例が後を絶たない。県基地対策課は「地位協定で守られていることが事件事故の背景にある」と協定の見直しを訴える。

 1万人超の米兵らが暮らす岩国市では、市が昨年1年間に把握した米兵絡みの摘発は窃盗2件、交通違反216件。「市長と米司令官間で連携を密にし、規律順守を強調している」(基地政策課)という。

 鹿屋での対応について、防衛省は「地元への連絡など態勢を整備する」との説明にとどめ、どう捜査するかは分かっていない。公務外の行動は自由となるため、県内各地で対応を迫られる可能性は否めない。鹿児島県警の幹部は「米軍絡みの対応は記憶にない。どうしたらいいか」とこぼす。

 基地問題に詳しい沖縄国際大の前泊博盛教授(安全保障論)は「米軍と付き合うなら最悪を想定することが大事だ。要請ベースでは行動に制限をかけるのは難しく、条例化するぐらいの厳しい態度が求められる」と指摘した。

■日米地位協定

 日米安全保障条約に基づき日本に駐留する米軍と米兵らの法的地位を定めた取り決め。1960年の発効後、改定されていない。軍人・軍属と家族の入国手続きについて「日本の法令の適用から除外される」と規定。公務中の犯罪の刑事裁判権は米側にあるとし、公務外でも米軍が身柄を押さえた場合、日本側が起訴するまで引き渡さないと定める。協定の運用を協議する日米合同委員会で米軍が使用すると決めた施設・区域では、米軍が「その設定、運営、警護、管理のための全ての措置」を取れ、警察権も持てる。協定内容が日本側に不利として、米軍基地を抱える自治体や全国知事会は見直しを求めている。