(詳報)大崎事件の再審認めず 鹿児島地裁、「事故死」の証拠否定 弁護団は即時抗告へ

 2022/06/23 07:21
原口アヤ子さんの再審開始が認められず「不当決定」の旗を掲げる弁護団=22日、鹿児島市の鹿児島地裁
原口アヤ子さんの再審開始が認められず「不当決定」の旗を掲げる弁護団=22日、鹿児島市の鹿児島地裁
 1979年に大崎町で男性の変死体が見つかった「大崎事件」で、殺人と死体遺棄の罪で満期服役した原口アヤ子さん(95)が裁判のやり直しを求めた第4次再審請求について、鹿児島地裁は22日、再審開始を認めない決定をした。中田幹人裁判長は「新証拠は無罪を言い渡すべき明らかな証拠には当たらない」と指摘した。弁護団は27日、福岡高裁宮崎支部に即時抗告する。

 確定判決によると、原口さんの義弟だった男性が酔って道路脇の側溝付近に倒れているのが見つかり、近隣住民2人が自宅土間に運んだ。その後、原口さんら親族3人が男性宅で絞殺。おいを加えた4人で男性の牛小屋に遺棄した。原口さんは捜査段階から一貫して否認し、共犯者3人の自白が確定判決を支えた。

 自転車で側溝に転落したことが原因の事故死を主張する弁護側は第3次で最高裁が問題視した「死亡時期」を明確化するため、解剖時の写真を基にした救命救急医による医学鑑定と、心理学などの専門家が分析した近隣住民2人の供述鑑定を新証拠として提出。絞殺時刻には「既に男性は死亡していた可能性が高い」と主張し、死因や死亡時期、近隣住民の供述の信用性が争点となった。

 医学鑑定について中田裁判長は「1枚の写真から得た限定的な情報」と指摘。「絞殺による窒息死の認定に合理的疑いが生じるものではない」とし、死因や死亡時期を証明する決定的なものとはいえないと結論づけた。近隣住民2人の「生きている状態で土間に運んで帰った」との供述の信用性を疑問視した供述鑑定も「他の関係証拠の内容を考慮しておらず、供述の信用性を適切に判断するための役割を有するにとどまる」と退けた。

 検察側は両鑑定とも「証明力に限界がある」「信用に値しない」と反論。請求棄却を求めていた。

 原口さん出所後の第1次で地裁、第3次で地裁と高裁支部が再審開始を決めたが、いずれも上級審が棄却していた。地裁は今回、原口さんの元夫(故人)の再審開始も認めなかった。

 【大崎事件】1979年10月、大崎町井俣の農業男性=当時(42)=の変死体が自宅牛小屋の堆肥の中から見つかった。鹿児島地裁は80年、殺人と死体遺棄の罪で義姉だった原口アヤ子さんに懲役10年、長兄(原口さんの元夫)に同8年、次兄に同7年、死体遺棄罪でおいに同1年を言い渡した。確定判決は原口さん以外の3人の自白などを根拠に、男性の生活態度に不満を募らせた原口さんが元夫らと男性宅で首をタオルで絞め殺害、おいを加えた4人で牛小屋に遺棄したと認定した。