牛肉の「おいしさ」 サシ以外の見た目でお墨付き 北海道乳牛ブランドに独自基準、宣伝なしで客つくように…生産者「自己満で売れるとは限らない」

 2022/06/26 11:00
肉の断面を撮影する機械。画像からロース芯面積やサシの入り具合などのデータが自動で割り出される=5月31日、北海道清水町の十勝清水フードサービス
肉の断面を撮影する機械。画像からロース芯面積やサシの入り具合などのデータが自動で割り出される=5月31日、北海道清水町の十勝清水フードサービス
 牛肉の品質を表す格付けは、歩留まりと肉質を組み合わせた規格をもとに決まる。特に重視されるのはサシ(脂肪交雑)で、多いほどランクが上がり高値がつく傾向がある。そこに味の評価は含まれない。

 そんな中、「おいしさ」とひも付く新たな指標で、肉の価値を評価しようと挑む産地があった。

 酪農が盛んな北海道清水町にある十勝清水フードサービス。加工場をのぞくと、牛の枝肉のカットが行われていた。

 作業台の端に、見慣れない箱形の機械が置かれていた。その横でスタッフが塊肉をトレーに乗せ、機械のスイッチを押す。すると、トレーが動き箱の中に肉が吸い込まれていった。

 寺原徹二工場長(47)は「中でトレーが回転して、サーロインとリブロースの断面を自動で撮ってくれる」と説明する。断面画像から、サシの入り具合や肉の色、ロース芯面積などが自動で割り出されるという。

■裏付け

 同社が扱うのは、乳牛の雄を肥育した地元産ブランド「十勝若牛」。通常より半年早い14カ月齢前後で出荷する若牛は、柔らかく臭みのない赤身肉を売りにする。

 一方で、乳牛のためサシは入りにくく、格付けでは肉質は2等級止まりだ。しかも当初は「どこの牧場の肉か分かる」ほど、味や見た目にばらつきがあった。

 ブランド力の向上には品質の安定化が欠かせない。そこで10年ほど前、画像解析を用いた肉質評価を研究する帯広畜産大学(帯広市)の口田圭吾教授(57)に協力をあおいだ。

 年間に出荷する4000頭強について、全頭の肉の断面を撮影し、試食して味や香りをチェック。画像解析値と食味検査の評価を、生産履歴や格付け成績と照らし合わせた。見た目とおいしさの関連を科学的に裏付けるためだ。

 こうして、若牛ではサシ以外に肉色が味や柔らかさに影響することが分かり、従来の規格より詳細に肉色を評価できる新基準「iBCS」を作成できた。食味性の高さが期待できる肉の見た目上の条件も導き出し、お墨付きを与える評価基準も考案した。

■餌を統一

 生産者はデータによって成績を客観視できるようになり、餌の統一につながった。品質の均一化が進み、今では相場より高値で取引され、宣伝しなくても客がつく。

 生産組合の吉田哲郎組合長(45)は「自己満足したからといって売れるとは限らない。ニーズに合うものを作らないと」と力を込める。将来は基準を満たす肉をプレミアム化して売りだそうと構想する。

 口田教授は「どんな肉が好まれるのか手探りだと思う。データを集め指標を作れば、生産者も安心感を持って牛を飼える」と、和牛への応用にも意欲を見せる。

 消費者の嗜好(しこう)は多様化し、見た目を主な物差しとする従来の評価では限界が近い。十勝若牛の取り組みは、これからの和牛の在り方にも示唆を与えている。

(連載【翔べ和牛 最終部 持続への挑戦】より)