「保険適用切れる43歳まであきらめない」 不妊治療を続ける40歳教員、でも職場では孤立しがちに… 与野党が掲げる「治療と仕事の両立推進」とは

 2022/06/28 11:20
不妊治療を受けやすい環境整備を訴える女性
不妊治療を受けやすい環境整備を訴える女性
 「不妊治療がここまで大変だと思っていなかった」。鹿児島市の教員女性(40)は、この1年半で60~70回通院するクリニックで、少し疲れた表情を見せた。

 2017年に結婚したが子どもに恵まれず、20年11月頃から治療を開始した。子宮に精子を注入する「人工授精」はうまくいかず、21年5月から1年余り、体内から取り出した卵子に精子を受精させる「体外受精」に取り組む。

 採卵の前段階にホルモン注射を受けるため、車で15分ほどかけて2週間ほど毎日通院する。早めに切り上げた仕事は、自宅に持ち帰ったり、翌朝早く出勤したりしてカバーする。

 医師が卵巣の状態を診て、採卵日はその2日ほど前に決まる。「学校行事に重ならないか毎回不安でいっぱい」と打ち明ける。採卵当日は全身麻酔をかけるため仕事を休む。他の教員に頭を下げ、時間割を組み直す作業に追われるという。

 これまで採卵4回、受精卵を培養した胚の子宮への移植は3回経験。実費負担は100万円近くに上る。

 不妊治療を始めた年にちょうど、当時の菅義偉首相が少子化対策の目玉として公的保険の適用を拡大する方針を打ち出した。今年4月から、新たに人工授精や体外受精が対象になったが、仕事との両立の難しさは変わらない。子どもの成長にかかわり、やりがいを感じている教職を辞めることも頭をよぎったほどだ。

 少子化に歯止めがかからない。対策は参院選でも重要なテーマの一つ。与野党とも公約で「不妊治療と仕事の両立推進」を掲げている。ただ、どのように実現するかは不透明だ。

 「保険適用の年齢制限がくる43歳まであきらめない」と気丈に話す女性。「治療を受ける人は周囲に打ち明けられず孤立しがち。社会的に理解が深まり、休みを取りやすい環境になるよう法整備を進めてほしい」と訴える。

 不妊治療が原則3割負担の保険適用になったとはいえ、経済的負担が増えるケースもある。これまで最大30万円の国の助成制度があったが、保険適用を機に廃止されたからだ。

 鹿児島市の「レディースクリニックあいいく」の樋渡小百合院長は「比較的料金の高い大都市部では保険適用の恩恵を受けられるが、料金設定が元々低い地方では逆に負担が増えるケースが多いのでは」と指摘。流産を繰り返す人や年齢的にチャンスの少ない人は、より高度な治療が必要になる場合もあるが、保険対象外で全額自己負担になるケースがあるという。

 不妊治療は検査を含め夫婦5.5組に1人が経験している。日本産科婦人科学会によると、2019年、14人に1人の子どもが体外受精で生まれた。樋渡院長は「自治体によっては保険適用の有無にかかわらず自己負担分を助成するところもあるが、どの地域に住んでも平等に治療を受けられる制度を整えるべき」と国政の課題を挙げた。

 (参院選かごしま「託す」より)