鹿児島大生死亡、9年実刑確定の飲酒事故 ひき逃げは懲役10月 鹿児島地裁判決 大学生の両親「人間の尊厳踏みにじる行為。刑軽すぎる」

 2022/06/30 08:30
 鹿児島市大竜町の国道10号で昨年2月、鹿児島大学1年だった男性=当時(20)=が飲酒運転の車にはねられ死亡した事件で、危険運転致死の罪などで懲役9年の実刑確定後、再捜査で道交法違反(ひき逃げ)の罪に問われた無職の男(27)の判決公判が29日、鹿児島地裁であり、中田幹人裁判官は懲役10月(求刑懲役1年)を言い渡した。

 鹿児島地検は危険運転致死と酒気帯び運転の罪で起訴し、ひき逃げは不起訴とした。遺族の不服申し立てを受けた鹿児島検察審査会が昨年10月、「起訴相当」と議決。地検が再捜査し、今年2月にひき逃げの罪で起訴した。

 判決理由で中田裁判官は人を死傷させる可能性がある事故を起こした認識があったとし、「停止中の車に追突するまでの間に車を止めることは容易だった」と指摘。「追突後、警察に飲酒事故を起こしたことを告げただけで、救護措置を取っておらず、酌量の余地に乏しい」と述べた。

 判決によると、昨年2月9日午前5時50分ごろ、時速約93キロで軽乗用車を運転し、交差点を自転車で横断していた男性をはねた後、約270メートル先の交差点で信号待ちしていた車に追突。約30分間車内にとどまり、救護措置を取らなかった。

■「被告から納得できる答弁なかった」

 飲酒運転の車にはねられ亡くなった男性=当時(20)=の両親が29日、取材に応じた。懲役10月を言い渡したひき逃げの判決に「人間の尊厳を踏みにじる行為。量刑は軽すぎる」と語り、裁判を通じ飲酒運転抑止の機運が高まることを願った。

 -ひき逃げが不起訴になり、検察審査会の議決を経て起訴された。

 「『逃げ得は許されない』という意味で判決が出てよかった。ただ、一度不起訴にしたことで今回、検察側に遠慮があったのではないかと感じた。前回のように裁判員裁判で一括審理されれば量刑はどうなったのか、ひき逃げももっと追及できたのではと思う部分はある。被告の口から2回真実を聞く機会を得られたと前向きにとらえたが、納得できる答弁はなかった」

 -危険運転致死などでは懲役9年が確定した。

 「今までより飲酒運転の量刑は重くなったかもしれないが、こちらの思いとはかけ離れている。判決文の『被害者1人の事案』との表現に、一人しか亡くなっていない事件という印象を受け、今も苦しんでいる。被告は酒を飲んだ上で故意で車を運転し、赤信号を無視して猛スピードで交差点に進入した。過失と変わらないような扱いにはやりきれない思い」

 -裁判を終えての思いは。

 「獣医師になる夢に向かって頑張っていた息子を思い出すのはつらい。返してほしいと今でも思う。奪ったものの大きさを自覚し、しっかり反省してほしい。納得できないことも多いが、この裁判が少しでも飲酒運転の抑止につながればと願っている」