ウクライナ侵攻機に憲法改正論議に変化…「日本でも起こるかもしれない」 護憲派は危機感「武力持つことで攻撃対象に」 識者は「候補者が説明責任果たして」【参院選 論点を問う】

 2022/06/30 11:00
街頭で改憲反対を訴える護憲派メンバー=5月19日、鹿児島市易居町
街頭で改憲反対を訴える護憲派メンバー=5月19日、鹿児島市易居町
 2月から続くロシアのウクライナ侵攻。鹿児島市郡元1丁目の会社員鳥越陵平さん(26)は現地の惨状に、日本国憲法を改正し戦力を保持する必要性を感じ始めた。

 武力を使う、使わないは別として、今のままでは有事に国を守れないのではないか。平穏な生活を失ったウクライナ国民を見ると不安になる。「日本でも起こるかもしれない。その前に対策した方がいいと思う」

 南日本新聞が毎年4月に実施している憲法に関する県民世論調査で、今年は「憲法改正が必要」とする回答が60.8%となり、前年から9.1ポイント増えた。60%を超えたのは2013年以来だ。

 戦争放棄などを定めた「9条の見直し」についても反対派が5割を切り、賛否が47.8%ときっ抗した。調査結果を分析した専門家は、ウクライナ侵攻などの影響が出たとみている。

 改憲の機運に県内の護憲派は危機感を募らせる。「武力を持つことで攻撃対象となり、市民が危険に巻き込まれる」。各地で集会を重ねるなどして、憲法を守る必要性を訴えている。

 憲法改正の手続きは、衆参両院それぞれ「総議員の3分の2以上の賛成」を得れば国会で発議し、国民投票にかけることができる。今回の参院選は改憲に前向きな自民、維新、国民に、加憲を掲げる公明を含めた「改憲勢力」の議席の増減に注目が集まる。

 岸田文雄首相は9条に自衛隊明記などを盛り込む自民党改正案を「緊急の課題」と位置付ける。同党は参院選後、早期に改正の国会発議を目指すとしている。

 立憲民主党は「論憲」の立場から憲法論議を深めるとしつつ、自衛隊を明記した自民案に反対の立場。共産、社民両党は9条を含めた改憲に反発している。

 ただ、選挙戦では大半の候補が第一声などで憲法問題に触れず、議論は低調のようだ。有権者からは判断に迷うとの声も上がる。

 鹿児島市紫原4丁目の自営業國分真希さん(48)は「防衛力は欠かせないし、憲法を変えないといけないと思う。でも平和の根源には憲法があるから、残せるなら残したい」。同市伊敷1丁目の無職大塚卓磨さん(68)は「今も自衛隊はあるが、スムーズに動かすのに改正が必要なのだろうか」と話す。

 憲法は国民が権力者を制するための規範である。「ウクライナ情勢を背景に改正議論を加速させるというのは短絡的ではないか。権力者が積極的に変えようとするのは警戒すべきだ」。志學館大学(同市)の今井健太郎講師(憲法学)は指摘する。

 改憲論議で最も尊重されるべきなのは国民の声だと強調。「有権者は社会の何が問題で、改憲が必要な時にどの条文をどう変えるか、と具体的に考えることが大事だ。詳しく説明できるかどうかで候補者を判断してはどうか」と助言する。候補者に対しては「国民が憲法論議に何を望むか真摯(しんし)に向き合い、説明責任を果たしてほしい」と求める。