住民600人の校区に空き家20戸 安い賃料でもUターン希望なく…目立つ耕作放棄地、途絶えた伝統芸能、児童減…「地域維持できない」 人口減対策、効果は?【参院選 論点を問う】
2022/07/02 11:00

2021年に特認校となった切通小学校=30日、出水市境町
かつて1000人以上いた校区住民は現在約600人。高齢化率は4割を超える。担い手不足から特産のミカンの畑は耕作放棄地が目立ち、伝統芸能「前田鎌踊り」の伝承も途絶えた。児童の減少に歯止めがかからない切通小は、昨年度から校区外の通学も認める特認校となり、存続の道を探っている。
こうした状況に危機感を募らせ、空き家の活用を中心とした対策に乗り出したのが地元の米ノ津東地区コミュニティ協議会。校区内に空き家約20戸があることを把握し、改修に関する勉強会や校区外に出た人にUターンを促す広報活動を2年前から展開してきた。しかし、まだ1人も呼び込めていない。
「若手がほとんどおらず、自治会長も高齢者がやるしかない。今はまだ地域のコミュニティーを維持できているが、今後は難しい」。同協議会の空き家対策プロジェクトリーダー、岩橋幸一さん(68)の表情は厳しい。
県人口の減少は加速しており、今年5月現在約156万7000人。さらに国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2045年は約120万4000人で、23年間で36万3000人減る見通しだ。その規模は県内2~5位の霧島、鹿屋、薩摩川内、姶良4市の現在の総人口に相当する。
鹿児島をはじめ地方の人口減少が著しいのは、地元に進学先や仕事場が少なく、東京をはじめとする都市部への一極集中が止まらないからだ。
同研究所人口構造研究部の小池司朗部長は「これまでは、Uターン者が地方の人口減少を和らげる役割を果たしてきた」と分析。一方、高齢化が進めば都市部に流出する地方出身者自体が減るため、Uターンに頼るのは難しくなるとみる。
小池さんは東京や大阪といった大都市圏出身のIターン者が鍵を握るとし、「大学など高等教育を地元で受けられるようにし、魅力ある働き口をつくるといった長期的視点に立った対策が必要」と指摘する。
政府は2014年、東京一極集中の是正を目指す「地方創生」を打ち出した。しかし、20年に地方と東京圏の転出入を均衡にする目標は達成できず、24年度に先送りした。また、21年の出生数は約81万人で6年連続で過去最低を更新。コロナ下の出産への不安が影響した可能性もあり、少子化が一段と進む恐れがある。
参院選では各党が企業の地方分散や地方の住民税の軽減、出産・教育費の無償化など多様な人口減少対策を掲げる。だが、岩橋さんには、めぼしい成果を上げられていない地方創生と重なって見える。「お金を出すだけで済む話ではない。具体策と、その効果を検証して次に生かす仕組みが必要だ」と訴える。
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