半世紀、過疎地支える給油所「辞められない。地域のため」 コロナ禍・燃油高が追い打ち いつまで続けられる…不安にこたえる施策は?

 2022/07/05 11:15
原油高や人口減少などさまざまな困難下でも懸命に営業する田代石油店の木尾衛さん=錦江町田代
原油高や人口減少などさまざまな困難下でも懸命に営業する田代石油店の木尾衛さん=錦江町田代
 大隅半島の錦江町は鹿児島県内でも過疎化が早く進んでいる。山あいの田代地区は特に顕著だ。田代石油店は半世紀以上前からここで営業を続けてきたが、過疎化に加えて最近は新型コロナウイルス禍や燃油高が経営を直撃する。

 7月初めの週末。代表の木尾(このお)衛さん(55)が午前7時に店を開けると、間もなく軽油を積んだタンクローリーが到着。同じころに最初の客も入ってきた。その後も次々と客が訪れる。

 客の多くは農業や畜産業を営む近くの人たち。なぜこのスタンドを利用するのか。「代々来ている」「無くなったら困るのは自分たちだから」。地元だからこその愛着をうかがわせる。

 スタンドは衛さんの父が1971年に開業した。衛さんが働き始めたのは大学卒業後の24歳の時。今の「やりがい」を問うと、「そんな深いことは考えたことがない」とした上で、「毎日シャッターを開けて営業しないと、地域の人が困ってしまうから」

 地域と密接につながってきたが、過疎化によって利用者は徐々に減少してきた。燃費のいいハイブリッド車の普及も給油量には影響を与えているとみられる。さらに、ここ1、2年は新型コロナウイルスのため、「前の道路の通行量は15%くらい減った。比例するように売り上げも1割落ちている」と嘆く。

 店は次男の浩気さん(27)と2人で切り盛りする。父親が配達や畑仕事に出掛けた後は1人で対応。「父や祖父が築いてきた地域との関係性の深さは尊敬できる」と語った。

 浩気さんが最近感じるのは燃油価格高騰の影響だ。ガソリンは、1年前の最も安かった時期と比べ30円近く上がっているという。満タンでなく、定額で給油する人が明らかに増え、常連で顔を見なくなった人もいる。「遠いロシアとウクライナの話が日本の地方にも影響している。燃料の価格をもう少し下げる政策をしてもらえたら」

 一方、町商工会の副会長も務める衛さんにとって、地域の活性化も課題だ。景気の良かった一昔前に比べると、建設関係者などの利用もめっきりと少なくなった。「観光地の整備や建設事業の増加など、地方に目を向けた施策を実行してほしい」と話す。

 経済産業省の統計では、2011年度末に990カ所あった県内の給油所は20年度末には799カ所と、約2割減少した。衛さんも、スタンドが将来どうなるか不安を感じている。四つある地下の貯蔵タンクのうち、二つは今後改修が必要で、数百万かかる見通し。配達用ローリーの点検など維持管理にも多くの費用が必要になり、きめ細やかな補助があれば、と望む。

 「地域のためには辞めたくても辞められない。でも、住む人、継ぐ人がいなければ、続けられない時がくるかもしれない」

(参院選かごしま「託す」より)