京セラ城下町 働き手不足が深刻 世界的な半導体需要増で新工場 頼みの高校生は減少…TSMC熊本への流出も懸念

 2022/07/22 13:30
市企業連携協議会が開いた高校側との情報交換会=6月23日、薩摩川内市のSSプラザせんだい
市企業連携協議会が開いた高校側との情報交換会=6月23日、薩摩川内市のSSプラザせんだい
 鹿児島県薩摩川内市の人手不足が進んでいる。世界的な半導体需要を受けた京セラ鹿児島川内工場の求人増を背景に、昨年度の有効求人倍率は過去5年間で最高を記録した。頼みの高校新卒者は地元志向を強めているものの、就職者数は減少。京セラ川内を含む各企業は人材確保に苦悩する。

 川内公共職業安定所(ハローワーク川内)によると、2021年度の薩摩川内市の有効求人倍率は1.40倍と、前年度から0.25ポイント上昇。全国と県の倍率を上回った。

 京セラ川内は、新型コロナウイルス禍で普及したテレワークの設備や第5世代(5G)移動通信システムの市場拡大により半導体用部品の受注が急増。来秋には新工場操業も控え、年100人ペースで中途採用を続ける。

 有効求人倍率の上昇は、これに京セラ川内へ従業員が転職した地元企業の求人も影響。医療福祉や建設業からの旺盛な募集も押し上げているという。

 そんな中、地元各社にとって高校生への期待は大きい。同ハローワーク管内の5校(薩摩川内市4校、さつま町1校)への求人は増加。コロナ禍もあって高校生の地元志向は強まり、21年度の5校の県内就職割合は68.1%と、前年度より20ポイント近くも上がった。ハローワークは本年度も地元志向が続くと分析する。

 一方、高校生の就職者数は年々減っているのが実情。21年度の5校の就職内定者は207人で、前年度より90人少なかった。生徒数の減少や進学志向の向上が背景にあるとみられ、県全体も同じ傾向にある。

 京セラ川内には今春、前年の約3倍に当たる高校・短大・高専の新卒者が入社。大半が高校卒で、採用はかなり苦労したという。担当の岡本弘行さん(48)は「生徒数が減る中、地元で働きたいと思う人をもっと増やさないと、県内だけでの人員充足はできない」と危機感を示す。

 京セラ川内の雇用拡大に地元企業は複雑な思いを抱く。地域経済に活気を与えると歓迎する一方で、人材が流れる懸念があるためだ。市企業連携協議会の田中博代表理事も「あらゆる業界から相談を受ける」と話す。毎年6月に北西薩の高校と情報交換会を開き、昨年からは市などと主催する合同説明会に高校生も招いて、地元企業をPRする。

 薩摩川内を拠点にし、県内で有数の高卒採用数を誇る川北電工(本社・鹿児島市)も頭を悩ます。県全域の高校を足しげく通い、離職対策の強化もしてきたが、昨年度は目標人数を達成できなかった。「建設業の採用が苦しい中、一層厳しい」と担当者は吐露する。

■不安の種

 人材確保を巡り、薩摩川内市の企業は隣県熊本にも不安の種を抱える。世界的半導体メーカー・台湾積体電路製造(TSMC)の新工場だ。半導体の国内生産を強化したい国の後押しを受けソニーグループなどと建設中。菊陽町で2024年末の出荷開始を目指す。

 「大手のTSMCと京セラ川内が熊本や鹿児島の人材を取り合えば、われわれにしわ寄せがくるのでは」。薩摩川内市のある採用担当者は漏らす。

 京セラ鹿児島川内工場採用担当の岡本弘行さんも「脅威ではある」と警戒する。京セラ川内の採用は県内が主で県外出身は例年1割ほど。だが、「TSMC新工場の大学・大学院卒向けの求人は、給与待遇面が相場より高い」と懸念する。

 とはいえ、高校新卒者をどれだけ取るのかはまだ把握していないという。岡本さんは「影響が出るとしても来年度以降」として、これまでの採用実績もアピールしながら県内高校の信頼獲得に注力していく考えだ。