桜島の噴石、本当に2.4キロ飛んだ? 噴火警戒レベル5引き上げの根拠、今も見つからず 専門家「観測体制が不十分」

 2022/08/03 07:32
避難所で開かれた市の説明会。住民からは、対応の遅れや説明不足を指摘する声が相次いだ=7月25日、鹿児島市の高齢者福祉センター東桜島
避難所で開かれた市の説明会。住民からは、対応の遅れや説明不足を指摘する声が相次いだ=7月25日、鹿児島市の高齢者福祉センター東桜島
 桜島の噴火警戒レベルが初めてレベル5(避難)となった7月24日夜、鹿児島市は島内の一部地域に避難指示を発令した。幸い大きな被害はなく3日間でレベルは引き下げられたものの、想定外の事態に住民は戸惑い、鹿児島地方気象台や行政の情報の発信や共有に課題が残った。専門家からは気象台の観測体制に疑問の声も出ている。

 気象台は24日午後8時50分、警戒レベルを5に引き上げ、同10時20分に市は避難指示を発令した。レベル5となっていた3日間、桜島の住民は「もっと早く避難指示を出せなかったのか」「欲しい情報が入らず、自宅が避難の対象地域か分からなかった」と不満を口にした。「避難指示の出た地域以外は島内でも普通に生活できていたのに、危険性ばかりが発信された」との意見もあった。

 京都大学の井口正人教授も情報周知のあり方を課題に挙げた。「警戒レベルの判定基準自体は特に問題があるとは考えていない」とする一方、「大事なのは警戒範囲」と話す。単に「レベル5」とだけ言われてもどう行動すべきか分かりにくい。警戒範囲をキロ数で示せば、「全島避難か一部避難かなど、正確な理解が促される」と提言する。

 今回は高感度カメラの映像をもとに、大きな噴石が基準の2.4キロを超えて飛散したと判断し、レベル引き上げとなった。だが、噴石は2日現在、見つかっていない。井口教授は「噴石と空振には一定の相関関係がある。それを踏まえると今回は2.4キロ飛んでいなかった可能性もある」と指摘。「気象台はカメラで確認したと言うが、裏付ける体制が不十分。ドローンで上空から調べるなど対策強化が必要」と話した。

 気象台と行政機関との情報共有も万全だったとは言いがたい。鹿児島市危機管理課によると、レベル引き上げの原因となった24日午後8時5分の爆発から30分後、担当者が気象台に連絡。「引き上げ予定であるが、時間までは分からない」との回答を得た。緊急速報メールでレベル上げを知ったという下鶴隆央市長は29日の定例会見で「もう少し早く情報をいただきたかった」と述べ、積極的な情報共有を求めた。

 一方の気象台は、27日の警戒レベル引き下げ時の会見で「レベル運用については事前に協議しており、必ずしもその都度話し合う必要はない」と語り、観測に集中する立場を強調。両者の認識にずれが見られた。

 今回、被害は確認されなかったものの、大正噴火級の大規模噴火は近い将来、起こる可能性がある。浮き彫りとなった課題を検証し、住民がより適切な行動を取れる体制作り、情報の周知につなげることが求められる。