同郷のJR元役員の出世を喜んだ思い出の日々… 日付がずれた「預金証書」にも「友人を疑ってはいけない」と打ち消した 1000万円詐欺被害の収まらない気持ち「お金だけの問題ではない」
2022/08/04 21:04

德田哲也被告が偽造した「共済預金」の証書。日付の文字がずれている(画像の一部を加工しています)
2021年11月、6年近く会っていなかった被告から突然電話があり、訪ねてきた。共通の知人が作ったという菓子をくれ、健康状態や昔話に花を咲かせた。JR九州が運行する豪華寝台列車「ななつ星in九州」が鹿児島を走るようにしたと話し、塩田康一県知事とのツーショット写真も見せたという。
■ずさんな証書
被告は顧問の肩書が付いた福岡市の法人の名刺を渡し、年利5.2%の「社内共済制度預金」の説明をした。菓子を作ったという共通の知人も出資したといい、「親しい関係者に限って出資希望を受けている」と誘った。
同郷の友人。だますはずがないという信頼感、連絡が途絶えがちになっていた罪悪感、高金利への関心もあった。妻と500万円ずつ計1000万円を預けることをその場で決めた。
被告の代理人弁護士によると、JR九州の預金制度を装って出資を募る一方、「共済預金」をかたって20人から預かった約6000万円が返済されていない。
男性は5日後、1000万円を渡した。被告が手渡した「証書」は日付の文字がずれ、ずさんだった。「高額預金の割にちゃちではないか」と思ったが、「親しい友人を疑ってはいけない」と打ち消した。
今年2月、「まだ受け付けができるが、増額分はないか」「知り合いで希望する人でもいい」と催促の電話が2度あった。いずれも断った。約4000万円を預けた知人女性から「詐欺のようだ」と連絡があったのはその数日後だ。
■謝罪の電話
男性はすぐに証書に記された福岡市の法人に電話したが通じなかった。被告から「何の用事か」と折り返しの電話があった。番号は法人の事務所ではなく、被告が住む福岡の番号だった。携帯電話に転送される設定になっていたことを後で知った。
その日の夕方、再び電話があり、被告は「どうにもならなかった。1999年ごろからだまし行為をしてきた」と謝った。証書は「パソコンを借りて偽造した」という。
男性などによると、母子家庭で育った被告は、中学卒業後は高校には進まず、国鉄に就職。働きながら学んだという。数年前に被告の母の葬儀に参列した際、さまざまな肩書の花輪が並んでいた。
「苦労したけれど、出世して良かったと喜んだのは何だったのだろう。友情は自分の一方的なものだったのか」。旧知の友人に裏切られ、気持ちが収まらない。
5日の初公判を前に「お金だけの問題ではない。罪をしっかり償い、心から反省し、友人を苦しめて悪かったと思ってほしい」と望む。
(連載「被害者の叫び JR元役員詐欺より」)
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