地域の伝統行事、存続の危機…400年の歴史「市来の七夕踊り」7日に最後の奉納 少子高齢化で苦渋の「休止」

 2022/08/05 20:48
市来の七夕踊で披露する「太鼓踊」の練習に励む人々=いちき串木野市大里
市来の七夕踊で披露する「太鼓踊」の練習に励む人々=いちき串木野市大里
 約400年の歴史がある国の重要無形民俗文化財「市来の七夕踊」は、7日が最後の奉納となる。踊りを継承してきた、鹿児島県いちき串木野市大里地区の少子高齢化が進み、担い手不足で継続が困難になったからだ。来年以降は「休止」の形を取るが、後世につなごうとする動きも出ている。

 七夕踊は、島津義弘の朝鮮の役での活躍を記念し踊ったのが始まりとされる。その後、1684年に大里地区の開田を祝い披露。豊作祈願として同地区で毎年奉納されてきた。

 踊りは場所を変えて一日中続く。各集落は分担して“作り物”と呼ばれる鹿、虎、牛、鶴の張り子を用意。当日はそれに人が入って自由に舞い、琉球(りゅうきゅう)王や大名行列などが続いた後、メインの「太鼓踊」が登場する。

 昔は大里の全14集落の青年団が中心となり、年長者が教えながら準備していた。しかし、少子化で若者は減少。年齢を問わず地区全体で支えてきたが、高齢化が拍車をかけた。数年前から地元の高校に依頼し人手を補う一方「奉納時期を変える」「規模の縮小」など継続できる方法を模索してきた。

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 こうした状況に、七夕踊保存会や公民館長らが協議し「従来の内容で続けるのは難しい」と判断。2020年を最後に「休止」することを決めた。宇都隆雄副会長(75)は「価値ある伝統芸能をなくしてはいけないという思いは強いが、今の状態では続けられない。苦渋の決断だった」と振り返る。

 最後は盛大に締めようと意気込んでいたものの、新型コロナウイルス禍で20年は中止にし、21年も延期した。地域の高齢化などを考えると、これ以上延ばすのは難しいため、今年は行う決断をした。ただし感染対策で作り物は展示のみ、行列の人数も減らし規模を縮小する。

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 1日夜、太鼓踊の練習が始まった。今回は9人が太鼓をたたく。全盛期の半分以下の人数だ。歌に合わせて太鼓やかねの音が響き、地域住民らが見守った。初めて演じる大学生の久木園孔輔(こうすけ)さん(20)は「休止は寂しいが、踊ることを喜んでくれた祖母のためにも頑張りたい」と話す。

 そんな中、地元の財産を残そうと呼びかける動きもある。平ノ木場(へのこば)集落出身の吉村正直さん(52)は6月、太鼓踊だけでも続けようと「七夕踊伝承会」を設立。20~50代の7人が集まった。吉村さんは「七夕踊は平和の象徴。将来、本来の形でできるかは不透明だが、一部でも残ればゼロにはならない。形を変えてでも続けて語り部を増やしたい」と意気込む。

 保存会の堂地國男会長(77)は「先代から引き継いだ伝統を終わらせてしまうのは心苦しい。地域が結束する行事がなくなるのが心配だったが、後の人がつなごうとしている気持ちは心強い」と語った。