鹿児島県最低賃金32円増答申 労働者「仕事が減るのでは」 経営者「タイミング最悪」 双方に今後の懸念

 2022/08/11 11:00
答申書を手渡す山本晃正会長(左)=鹿児島市山下町の鹿児島合同庁舎
答申書を手渡す山本晃正会長(左)=鹿児島市山下町の鹿児島合同庁舎
 「働く側にはうれしいが、これまで通り仕事がまわってくるか」「中小企業に死ねと言っているに等しい」-。鹿児島県の最低賃金(最賃)を議論してきた審議会は10日、時給853円へ過去最大となる32円の引き上げを答申して決着した。急激な物価高騰に対応した形だが、労働者、経営者双方から今後を懸念する声が上がった。

 「モチベーションが上がる」と喜ぶのは鹿児島市のコールセンターのパート女性(58)。勤め始めた頃の時給は600円台だった。「昇給に期待して老後のために頑張る」と前を向く。一方で、同市の学習塾で働く50代のパート女性は「会社が経費を減らそうと、パートやアルバイトの仕事を社員に割り振るかも」と危惧する。

 労働者側委員の日高実禎・連合鹿児島事務局長は1000円を目標にしてきた。一定の評価をしつつ、「労働者が生活できるかどうかを重視してきた。物価上昇が続く可能性もあり、まだ満足はできない」と話す。「離島の労働者やひとり親世帯などは853円でも厳しい。都会との地域間格差も大きい」と指摘した。

 押し切られた形の企業側は不満を募らす。「生活者と同じく、中小企業の経営もぎりぎりだ」。経営者側委員の浜上剛一郎・県経営者協会専務理事は語気を強める。コロナ禍で売り上げが落ち、ガソリンや原料など経費が増えても価格転嫁できずにいる事業者は多い。負担増を見越し、答申では大型経済対策を求める異例の付帯決議を盛り込んだ。「企業は努力している。次は行政の出番だ」

 「円安、ウクライナ危機にコロナ禍。賃上げには最悪のタイミング」。同市の家具店オンリーワンの佐々木正人社長(43)は苦しい胸中を語る。「時給だけでなく、社会保険料なども上がる。利益が上がらない中で、どこからその費用を出せばいいのか。せめてガソリン高騰や円安を何とかしてほしい」

 姶良市の交流施設フォンタナの丘かもうの従業員は半分以上がパートやアルバイト。コロナ禍や物価高のダメージもある。山野秀明会長(77)は「大事なのは従業員。企業も努力が必要だ」と人件費増に備え、経費の節約に努める。