酪農農家「搾っても搾っても利益上がらない」 飼料高、需要低迷で経営の危機 生乳価格アップでも「赤字埋まらない」
2022/08/13 07:30

干し草を食べる乳牛。農家のコストは大きく上昇している=湧水町
「搾っても搾っても十分な利益は上がらないが、それでも牛は毎日乳を出す。餌を食べさせないわけにもいかない」
南九州市で乳牛約100頭を飼う大渡康弘さん(47)はため息をつく。飼料は昨年から右肩上がりで上昇し、以前はコストの3~4割だった餌代は今、5割を超えた。加えて記録的な猛暑で乳量は落ち、手取りは減少。餌を安いものに代えるなど工夫しているとはいえ、自助努力には限界がある。
高騰の背景には、原油高を受けた海上運賃の値上げや急激な円安、ウクライナ情勢がある。生産者団体とメーカーで取り決められる乳価は通常、年度初めに決まるが、九州各県の酪農協でつくる九州生乳販連(福岡市)は期中改定を求めて交渉を重ね、7月下旬に飲用・発酵乳を1キロ当たり10円増額で合意した。生乳の一部は加工用などにも仕向けられるため、農家の手取りは7、8円の上昇となる。
値上げ幅は2009年3月以来となる大幅なもの。しかし大渡さんは「赤字を埋めるには足りない。離農する農家が出てもおかしくない」という。同販連も当初は「18円増額」を目指していたが、コロナ感染拡大で業務用需要が減っているなど、メーカー側の事情を考慮せざるを得なかった。
経営維持が難しくなる中、農家は生乳生産以外の副収入を模索する。
二反田登志子さん(66)=湧水町=の農場では、乳牛に黒毛和種の受精卵を種付けし、生まれた子牛を和牛繁殖農家に売ることで収益アップを図っている。県内産の干し草を購入して輸入の割合を減らすなどの努力もしているが、「生乳の出荷だけではコストを回収するのに精いっぱい。試行錯誤しながら生き残る道を探っている」と明かす。
酪農を巡っては近年、過去のバター不足の経験から増頭を促す施策が取られてきた。県内でも1戸当たりの飼養頭数は89頭(22年2月現在)と、この10年で約3割増え、大規模化が進んでいる。増頭に伴って牛舎を建て替えたり、搾乳ロボットなどの設備に投資したりした農家も多く、状況が改善されなければ資金繰りが厳しくなる可能性もある。
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