GIGAスクール、理念だけ先行? デジタル端末配備終わったけど…地方のネット環境不十分 メリット生かせず

 2022/08/13 21:00
夏休み中の持ち帰りに備え、デジタル端末を操作する児童ら=7月19日、鹿児島市の星峯西小学校
夏休み中の持ち帰りに備え、デジタル端末を操作する児童ら=7月19日、鹿児島市の星峯西小学校
 国の「GIGAスクール構想」に基づく全小中学生へのデジタル端末配備が、鹿児島県内で終わった。自宅へ持ち帰らせ夏休みの課題で積極的に利用する学校がある一方、家庭での安全な使い方に懸念が残ったり人手が限られ準備が進まないところも。感染症拡大や災害といった非常時に学びの場を保障するため、国は自宅に持ち帰る態勢を整えるよう求めているが現状は学習環境に差が出かねず、専門家は警鐘を鳴らす。

 「長時間使うと(健康に)悪影響があるので、1日の使用は2時間以内。持ち運びにも気を付けて」。終業式前日の7月19日、鹿児島市の星峯西小学校6年1組の教室で担任の保勇太郎教諭(36)は、端末を使う際の注意点を説明した。

 同校は今年、5、6年生計226人に端末を持ち帰らせた。長期休みで初の試み。紙の課題は昨年の半分程度とし、残りはデジタルドリルを利用。自由研究の調べ物や撮影にも端末を使えるようにした。

 広木小(同市)も、今夏から長期休みの家庭学習に生かす。5、6年生が夏休み当初から持ち帰り、3、4年生は登校日の8月19日から持ち帰る。課題は紙との併用で端末を一部使う。福留忠洋教頭は「アプリの機能で、担任が直接子どもと連絡を取れるのは利点」と強調する。履歴から、深夜帯や長時間の利用に目を配れるのも利点という。

 積極的に活用する学校がある一方、態勢が整わない自治体や学校もある。

 端末持ち帰りには、高速通信網の整備や自宅で使う際のルールづくり、悪質サイトへ接続できないようにするフィルタリング設定などが欠かせない。ただ「口永良部島内で光回線工事が未了」(屋久島町)「担当人員が限られ対応に時間を要する」(奄美市、伊仙町)「ネット依存やトラブルに対応するルールづくりが不十分」(長島町)など、課題を抱える自治体も残る。いずれも22年度中の準備完了を目指すが、学習環境に差が出かねない状況だ。

 奄美市のある中学校教諭は、校内で新型コロナウイルスに伴う欠席が増えた際に釈然としなかったという。「オンライン授業ができずメリットを生かせなかった。何のための端末導入なのか」といぶかしがる。

 ICT(情報通信技術)活用に詳しい鹿児島女子短期大の渡邉光浩准教授(52)=教育工学=は、配備目標が前倒しされた背景を「コロナ下でも学びを止めないための必要な措置」と強調する。整備が早まり対応にばらつきが出ることには理解を示しつつも「情報化社会を生き抜く力を養うには端末活用が欠かせない。GIGAスクール構想の理念を再度認識することが大切だ」と話した。

 ■GIGAスクール構想 全小中学生に1人1台のデジタル端末を配備し、校内の高速通信環境を整備する構想。文部科学省が2019年度打ち出した。GIGA(ギガ)は「Global and Innovation Gateway for All」の略。情報通信技術(ICT)を活用し、これからの社会で必要となる力を育むとともに一人一人に合った学びの提供を目指す。