国内最古級・最大規模の縄文集落跡 上野原縄文の森〝20歳〟 多彩なイベント、企画展 計238万人来場 コロナ下も遠足・修学旅行客が堅調 縄文キャンプ村、ナイトミュージアム計画
2022/09/15 21:33

復元集落を探索する国分南小学校の児童=霧島市の上野原縄文の森
8日午後、展示館に鹿屋養護学校高等部の生徒29人が訪れた。引率の先生の解説を聴きながら、興味深そうに土器などの展示品を見学していた。
修学旅行の一環。新型コロナ前は東京に行っていたが、この2年は県内に変更し、上野原縄文の森を行程に組み入れている。堀脇広樹校長(56)は「学校からも比較的近く、生徒たちが縄文文化に触れ合える貴重な場」と話す。
コロナ禍で、ここ2年は来場者が減ったものの、遠足や課外学習、修学旅行など団体客は堅調に推移する。県外からの修学旅行が少なくなった代わりに、鹿屋養護学校のように県内からの利用が増えたためだ。
年平均の団体数は320前後。コロナの影響が始まった2020年度は県外9、県内274の計283と少し落ち込んだが、21年度は県外20、県内314の計334と大幅に持ち直した。本年度も県内を中心に順調だという。
■多彩なイベント
縄文の森では36ヘクタールの広大な敷地を利用してさまざまなイベントが開かれる。今年4月からの半年間だけでも「上野原遺跡ウォークラリー」「まが玉作り」「縄文土器作り」「森の標本箱作り」「本格派流しそうめん」「十五夜まつり」などがあった。
開園翌年から続く春、秋まつりは、地元市民にとって恒例イベント。火おこしや弓矢作りなどの体験活動と地元学校の音楽ステージなどがある。期間中、毎回1万人ほどが訪れる。
学習の場としても力を入れる。企画展はこれまでに63回開いた。最近では「御楼門建立(20年)」「どうして?!縄文体験(21年)」「海と活(い)きた古代人(同)」「みどころ再発見 きりしまの文化財(22年)」など。数カ月ごとにテーマを変え、リピーターを飽きさせない工夫を重ねる。また年に5回の考古学講座は、専門家が旬の演題で講義、毎回数十人が聴講する。
■リニューアル計画
多彩なイベントや企画展などが功を奏し、来場者数は開園当初からコロナ禍前の19年度まで、年12万人前後でほとんど変動はない。開園時がピークで徐々に減っていく施設が多い中、安定した人気を保つ。休園やイベントの中止などで20年度は半減したが、昨年度から急回復している。
20周年を迎え、縄文キャンプ村やナイトミュージアムなど新たなイベントも計画する。さらに来年度後半、展示館の大幅なリニューアルを予定。最新の研究で、これまで9500年前とされた住居群と、7500年前とされた国重要文化財の土偶や一対のつぼ形土器の年代が、それぞれ1000年さかのぼることが分かったからだ。約2カ月休館し、展示内容を刷新する。
堂込秀人園長(64)は「公共交通機関がないため、アクセスが課題」としながらも「考古学だけでなく、子どもから大人まで楽しめる場を目指している。1万年を超える縄文の世界に浸ってほしい」と呼びかけている。
■記念イベント続々
開園20周年を記念し、今秋から来春にかけ、さまざまなイベントが開かれる。
17日からの企画展「南の縄文文化~縄文人の心を探る」では、鹿児島と九州を中心とした南の縄文文化と、昨年世界遺産に登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」を比較しながら、祈りの精神文化に焦点を当てる。九州国立博物館や東京国立博物館所蔵の北東北で出土した遺物約30点が、県内初公開となる。中でも遮光器土偶(青森)=九州国立博物館所蔵=や屈折像土偶(同)などが注目される。11月23日まで。
◆かごしま遺跡フォーラム 10月22日、国分シビックセンター多目的ホール。「上野原遺跡と南の縄文世界~縄文文化観の転換に迫る」と題して南九州縄文研究会の新東晃一前会長が講演するほか、縄文時代の植物利用について熊本大の小畑弘己教授ら3人が最新の研究成果を紹介する。資料代500円程度、定員200人(要事前申し込み)。
◆縄文シティサミット 11月5、6日、縄文遺跡を持つ全国17市町が参加、縄文の魅力を全国に発信するとともに遺跡を活用した町づくりを話し合う。秋まつりも同時開催し、九州歴史資料館(福岡)、西都原博物館(宮崎)、吉野ケ里歴史公園(佐賀)の体験ブースも設置される。
◆奄美巡回展「南の縄文文化&奄美の自然遺産と縄文文化(仮称)」 2月1日~28日、奄美市博物館。11日には同市の宇宿小学校で講演会とワークショップがある。
いずれも問い合わせは上野原縄文の森=0995(48)5701。
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