出るかノーベル賞…京都大・金久實特任教授(ラ・サール出身)、バイオインフォマティクスで注目の「候補」

 2022/10/03 11:02
京都大の金久實特任教授
京都大の金久實特任教授
 3日から発表が始まるノーベル賞の「候補」として近年取りざたされる鹿児島ゆかりの研究者がいる。京都大学化学研究所の金久實特任教授(74)=ラ・サール中高出身。コンピューターを使って生命現象を研究するバイオインフォマティクス(生命情報科学)の第一人者で、ゲノム(全遺伝情報)に関する独自のデータベース(DB)を開発した。論文は国内外の研究者らに数多く引用され、創薬などに生かされている。

 金久氏は京都大教授時代の1995年、ゲノムから生命システムを解読し、医療や産業につなぐためのDB「KEGG(ケッグ)」を開発、運用を始めた。例えば、代謝にどのような分子が関わっているかなど相関関係を「配線図」で示す。さまざまな生命現象について調べることができるのが特徴の一つだ。

 インターネットで公開されているKEGGは9月22日時点で、約8400種の生物が持つ計約4300万個の遺伝子データを収録。薬に関する情報も約1万2000種に上る。研究目的を中心に利用者は1日当たり20万人を超えるという。

 金久氏の論文は年間1万回以上引用され、右肩上がりに増えている。近い将来のノーベル賞候補として注目される米情報会社の「クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞」を2018年に受賞。今年のノーベル医学生理学賞は3日、化学賞は5日発表される。

 金久氏の父・卓也氏(08年死去)は元鹿児島大医学部教授。金久氏は小学6年で福岡教育大付属から鹿大付属に転入、高校まで鹿児島で過ごした。

 卒業後は東京大に進学。大学院は生物物理の研究室に入ったが、「大腸菌を使った実験で失敗の連続だった」(金久氏)。実験への苦手意識から大型計算機センターに入り浸るようになり、タンパク質の構造などを解析。この頃のコンピューターとの出合いが研究者人生に大きく影響した。

 研究者としての契機は1979~84年に留学した米ロスアラモス国立研究所時代。当時、世界でも画期的だったDNAデータベースの創設に関わった。その後、ヒトの全遺伝情報を解読する国際的プロジェクト「ヒトゲノム計画」が始まり、KEGG開発へつながる。

 金久氏は「生命の情報システムを明らかにする学問分野がバイオインフォマティクス。KEGGは生命をコンピューターに再現している」と話す。「やっていることがノーベル賞の対象になるとは思っていなかった。評価され光が当たるのは素直にうれしい」と控え目に語る。

 金久實(かねひさ・みのる)1948年1月23日、長崎市生まれ。66年に東京大学入学、大学院で修士・博士課程。米ジョンズ・ホプキンス大学、ロスアラモス国立研究所の研究員などを経て、85年京都大学化学研究所助教授、87年教授になり、2012年から現職。

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