戦艦大和が沈んだ海を望む慰霊碑へ案内された稲盛和夫さん。静かに手を合わせ、深々とこうべを垂れた
2022/10/08 11:00

平和祈念展望台の慰霊碑に手を合わせる稲盛和夫さん(前列左)と瀬戸口嘉昭さん(同右)=2009年9月17日、枕崎市(同市提供)
■元枕崎市長・瀬戸口嘉昭さん(81)
2009年、枕崎市制施行60周年の記念事業を進めるに当たり、ぜひとも稲盛和夫さんを記念講演会の講師にお招きしたいと考えた。
とはいえ、これといったつてはない。何とか会えた京セラの秘書室長には「講演はすべてお断りしているので無理でしょう」と言われたが、兵庫県尼崎市での鹿児島県人会まで行ってお願いすると「そこまで言うのなら」と了解していただいた。
そして、いよいよお迎えする直前、会場を変更せざるを得ないトラブルがあったが、稲盛さんは「どこでもいいですよ」と気にする様子もなく受け入れてもらった。
会場のホテルは900人を超す市民で大変な熱気。稲盛さんは「人は何のために生きるのか」と題して、27歳で会社経営を始めてからの半世紀を約2時間にわたりお話しになった。「良心とは純粋で美しく思いやりに満ちた優しい心。良心が指し示す方向に生きていけば、人生は素晴らしく展開していく」という言葉は今でも胸に残っている。
懇親会にも最後まで残り、懇談や写真撮影に応じていただいた。まったく偉ぶったところがなく、温厚で穏やかな人柄に感銘を受けた。
翌日は、お礼に枕崎市内や笠沙、坊津をご案内した。大変喜んでいただき、中でも海上から立神岩を見上げて「これは素晴らしい」と何度も口にされたのはうれしかった。
そんな中で太平洋戦争末期に戦艦大和と護衛艦が沈没した海域を望む平和祈念展望台を訪ねた時は、慰霊碑に手を合わせ深々とこうべを垂れておられた。静かで厳かなたたずまいが印象に残っている。
19年、近畿鹿児島県人会連合会が開いた稲盛さんの米寿のお祝いに誘われ、お会いした。以前と変わらずにこやかに話され、酒も注いでもらった。長く深いご縁をいただいたことを心から感謝している。
(連載「故郷への置き土産 私の稲盛和夫伝」より)
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