バリアフリー、ハードだけじゃなくて心も 国体・障スポ開催控え宿泊・観光施設で認定進む 鹿児島

 2022/10/17 11:44
観光施設の心のバリアフリー認定証=鹿児島市の奄美の里
観光施設の心のバリアフリー認定証=鹿児島市の奄美の里
 障害者対応の研修を受けるなど一定の基準を満たし、観光庁の「心のバリアフリー認定」を受ける観光施設が鹿児島県内で増えつつある。多くの障害者の訪問が見込まれる国体と全国障害者スポーツ大会まで約1年。今後は高齢の旅行者も増えると予想され、安全・快適に過ごしてもらう取り組みは、県の観光振興の面でも重要になりそうだ。

 「『困りごとはないですか』は魔法の言葉です」。9月下旬、吹上砂丘荘(日置市)であった「心のバリアフリー」研修会。講師を務めたNPO法人「eワーカーズ鹿児島」の紙屋久美子理事長(54)はアドバイスした。

 受講する従業員らは視覚障害や車いすの客を想定した応対や誘導を体験。ハードの改修だけでなく、コミュニケーションを通して障害を取り除く必要性を訴える講師の話に聞き入った。

 研修開催のきっかけは、別の施設が盲導犬を受け入れる際、スタッフに戸惑いがあったと聞いたためだという。寺脇正徳支配人(61)は「声をかける一歩を踏み出すことが重要と改めて感じた」と語る。

 観光庁は2021年、観光施設の心のバリアフリー認定を始めた。県内で認定(10月14日時点)を受けるのは、宿泊施設が7件、飲食店12件、観光案内所9件。宿泊施設以外は全国最多で、大半を鹿児島市が占める。下鶴隆央市長は「障スポを契機にユニバーサルツーリズム先進地をつくる」を公約に掲げる。同市は全ての観光案内所で認定を受け、施設の入り口やスロープの幅などバリアー情報の発信にも力を入れる。

 今年3月に認定を取得した奄美の里(鹿児島市)のレストランでは、スタッフの接遇意識が向上したという。担当する今別府颯人さん(28)は「車いすに関する問い合わせに店内の詳細な障害などを説明できるようになり、理解を深めてもらっている」と手応えを話す。

 eワーカーズ鹿児島は10月から離島での研修も始める。紙屋理事長は「障害者だけでなく、今後増える高齢者に向けても心のバリアフリーは大切。彼らから選ばれる旅行地になることは大きなビジネスチャンスだ」と意義を語る。「意識の持ち方ですぐにできる。国体や旅行者の増加を見据え、取り組みが広まってくれれば」と願う。

 ■心のバリアフリー認定制度 ソフト面のバリアフリー対応や情報発信に努める宿泊施設、飲食店、観光案内所を、観光庁が2021年から認定する。20年6月施行の「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」の一部改正に基づく措置。車いす通行を妨げない机やいすの配置など施設のバリアフリーを補完する措置や、年1回以上の研修等の実施、ウェブでのバリアー情報などの積極的な発信が認定条件となる。