開業以来18年赤字の第三セクター…「地域の足」どう守る? “全県支援”の枠組み 本年度末で期限 肥薩おれんじ鉄道

 2022/10/26 09:00
トンネルを抜けた肥薩おれんじ鉄道の下り列車=薩摩川内市西方町
トンネルを抜けた肥薩おれんじ鉄道の下り列車=薩摩川内市西方町
 第三セクター・肥薩おれんじ鉄道を鹿児島県内の全43市町村で支える枠組みが、本年度末で10年間の期限を迎える。沿線人口の減少などで厳しい経営が続き、近年は新型コロナウイルス禍や原油価格高騰が追い打ちをかける。「地域の足」を守るため、来年度以降支援の枠組みを維持するか、新たな形にするか、県の模索が続いている。

 現行の枠組みは2013~22年度、県内の全市町村で構成する県市町村振興協会が総額10億1500万円を上限に支援金を出す。対象は貨物輸送にも関係する線路や架線といった「下」と呼ばれる鉄道基盤部門だ。

 非沿線の市町村も加えた支援方式は、同じ線路をJR貨物の列車も使用することに着目した県が提案。「貨物輸送の恩恵は県全体で受けている」と協力を求め実現した。協会が拠出した支援金の総額は21年度末で8億8900万円に上る。

 だが、来年度以降の支援の行方については不透明感が漂う。

 そもそも同鉄道への支援は、04年の開業に合わせて県が設置した経営安定基金が出発点だ。経営に参加しない鹿児島市をはじめ非沿線2市4町(当時)と民間企業などが計5億円余りを「1回限り」の約束で拠出した。

 同基金が13年に底をつく寸前となり、生み出されたのが現行の枠組み。合意に至るまでは、事実上「2回目」の負担となる鹿児島市との調整が難航した。こうした経緯から今回、枠組みを維持する方針が示されれば、なし崩し的に支援が続くと難色を示す自治体が現れる可能性がある。

 同鉄道の県内区間沿線には八つの高校があるなど、通勤・通学など地域の足の役割を担っている。しかし、補助金を差し引き経営の実態を示す経常損益は、開業以来18年連続で赤字が続く。関係者は「仮に協会からの支援がなくなれば、県と沿線3市で知恵を出し合い、幅広い選択肢を検討するしかない」と話す。

 “全県支援”の期限切れが近づく中、県は来年度以降、どのような支援の在り方が可能なのか検討を続けるが、まだ方向性を打ち出せる段階にないという。

 交通政策課の滝澤朗課長は「今後も支援を続け、地域の公共交通を守っていくことが重要と認識している」と述べるにとどまる。