「やめんかーい」。赤字でもめる県人会を稲盛さんが一喝した。「反省材料にして、はよ飲む段取りを」と収めてくれた。誰もが兄貴と慕っていた
2022/10/27 11:00

稲盛和夫さん
■関西県人会総連合会副会長 渡辺俊彦さん(78)
2001年、鹿児島県人会関西総連合会発足の打ち合わせで、稲盛和夫さんと初めて会った。立派な経営者らしい、どっしりとした存在感ながら、決してえらぶらない、気さくな笑顔を見せてくれた。
総連合会ではいつも同じテーブル。毎回、稲盛さんのサインや記念撮影を求める人で列ができるので、せめて稲盛さんが料理を食べられるよう調整するのが私の役目になった。
よく一緒に会場を抜け出し、たばこを吸いに行った。最近は分煙が進み、どの会場も喫煙所が遠い。「前は、ここで吸えたやないか。何でだめなんや」と駄々をこねる稲盛さんを「わがまま言うなや」と叱ったら、しゅんとして「はい」と一言。素直でかわいらしいところもあった。
主催する「かごしまファンデー」が赤字になり、会合がもめたことがある。稲盛さんは「やめんかーい」と一喝。「今後の反省材料にしなさい。はよ飲む段取りをせんか」と、その場を収めた。私費で赤字の穴埋めをしてくれたと、後で聞いた。誰もが兄貴分と慕っていた。
総連合会や県人会の仲間のことを、常々「兄弟みたいなもんや」と評していた。それぞれが郷里から遠い関西で、苦労しながら働いてきた。年齢を重ねて親や実家がなくなれば、県人会に故郷の空気を求めたくなるものだ。まじめな稲盛さんが、ガキ大将のようにやんちゃな姿を見せたのは、懐旧の情や、同郷の気安さがあったからではないか。
私が奈良鹿児島県人会会長のほかに、地元団体の役職を引き受ける時には「一方的に上からものを言うな」と助言をもらった。教わったのは、相手を尊重することや、利他の心。もっと早く出会っていたら、私の人生は違うものになっていたかもしれない。
(連載「故郷への置き土産 私の稲盛和夫伝」より)
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