社会保険の適用拡大「単身者のメリット大きい」 被扶養配偶者なら長所と短所も…労務士が40歳パート女性のモデルで試算

 2022/11/10 12:09
中小企業が多い鹿児島では多くの女性がパートで働いている=鹿児島市
中小企業が多い鹿児島では多くの女性がパートで働いている=鹿児島市
 10月からの社会保険の適用拡大で、従業員101人以上の企業・事業所で働くパート主婦らが社会保険に加入すると、短期的には手取り収入が減る一方、老後の年金受給額は増える。生活設計の上で、どうするのが得なのかは気になるところ。社会保険労務士の北村佳文さん(鹿児島市)に一般的なモデルで試算してもらい、社会保険加入のメリット、デメリットについて考えた。

 モデルケースは夫の扶養に入っているパート女性(40)。時間給900円の週24時間勤務で、月の平均給与9万3000円をもらい、雇用保険に加入している。

 10月からの適用拡大で社会保険に加入すると、健康保険5218円、介護保険804円、厚生年金8967円で計約1万5000円が引かれる。1年では約17万5000円の手取りが減る(表1)。

 本人が20年間で負担する厚生年金保険料は「8967円×12カ月×20年」で計約215万円になる(表2)。

 では、年金はどう変わるのか。この女性が夫の扶養に入ったまま社会保険に加入しなかった場合、年金額は老齢基礎年金のみで年約77万8000円だが、社会保険に加入した場合は老齢厚生年金が加算され約90万7000円で、年12万9000円増える(表3)。

 20年間で個人が負担した総額約215万円に見合う額をもらうまでには16.6年。65歳から年金を受け取ると81歳までかかる。実際には個人負担分と同額を会社が負担しており、すべてを年金で取り戻すには倍の33年以上かかる計算になる。

 「長生きをするとメリットを享受できる」(北村さん)ものの、被扶養配偶者は加入しない選択もありそうだ。とはいえ、単身者や配偶者が自営業者などの場合、「社会保険に加入できるメリットは大きい」という。

 北村さんは「ただ、お金の損得だけで見ず、週20時間の制限にこだわらずに働くことで、社会への貢献やキャリア形成、自己実現など、新しい価値を得る可能性につながる。多様な生き方、働き方を考えて判断してほしい」とアドバイスする。