(詳報)出水の養鶏場で今季2例目の鳥インフル感染 7.7万羽の殺処分進む 「鶏舎をのぞくのが怖い…」農家ら落胆

 2022/11/25 07:30
発生農場へ向かうバスに乗り込む県職員ら=24日午後4時53分、出水市高尾野体育館前
発生農場へ向かうバスに乗り込む県職員ら=24日午後4時53分、出水市高尾野体育館前
 鹿児島県出水市の養鶏場で23日に確認されていた鳥インフルエンザの疑い例について、鹿児島県は24日、遺伝子(PCR)検査の結果、感染を確認したと発表した。県内の養鶏場での発生は今季2例目。高病原性の疑いがあるため、県は24日午後5時から発生農場の採卵鶏7万羽と、管理者の行き来がある別の農場の7700羽の殺処分を始めた。

 今季の国内家禽(かきん)での鳥インフルエンザ発生は17例目。県内の殺処分数は昨季の約15万7000羽を超え、1シーズン最多になる見込み。

 2例目の発生農場は同市高尾野にあり、17日に確認された1例目の南西約2.3キロ。23日午後、農場内で鶏がまとまって死んでいるのが見つかったため、北薩家畜保健衛生所が死んだり弱ったりしている13羽を簡易検査したところ10羽がA型鳥インフルエンザ陽性となった。

 鹿児島中央家畜保健衛生所によるPCR検査で24日、「H5亜型」ウイルスが検出され、農林水産省は高病原性の疑いがあると判定した。さらに詳しいウイルス型は国の専門機関で解析する。

 発生農場から半径3キロ内は移動制限区域に設定され、域内の27農場は鶏、卵の移動ができなくなった。対象農場には25日に県が立ち入り検査をする。

 半径3~10キロ内は搬出制限区域となり、66農場は鶏、卵の域外持ち出しが規制された。1例目と合わせて移動制限区域には40農場(176万5000羽)、搬出制限区域には68農場(341万6000羽)がある。車両消毒ポイントは稼働中の7カ所を継続する。

 殺処分は県職員らが交代で作業し、完了は25日以降とみられる。感染経路などを調べる農水省の疫学調査チームは25日に現地入りする予定。

 県畜産課によると、発生農場は1例目の移動制限区域内にあるため、18日に立ち入り検査をしていた。目視による確認で異常はなく、過去の感染歴やウイルスの有無を調べる検査も陰性だった。

■「ここで食い止めなければ」

 出水市の養鶏場で24日確認された今季2例目の鳥インフルエンザ感染。1例目の防疫措置を21日に終えたばかりだっただけに、関係者にショックが広がった。県や市の職員らは「ここで食い止めなければ」と、防疫対策に力を注いだ。

 2例目となる感染疑いが判明したのは23日夜。市は急きょ深夜に幹部会議を開いて情報収集し、殺処分などに備えた態勢を確認した。冨田忍政策経営部長は「2例目を出さないよう関係者が懸命に取り組んでいたのだが」と落胆した。

 殺処分を担当する県職員の第1陣は白い防護服に身を包み、24日午後5時前にバスで現地集合場所の高尾野体育館を出発。4時間おきに約60人ずつ投入され、照明がともされた発生農場で夜通し作業が進められた。資材搬入に携わった60代の市職員は「農家が一番大変だろうが、市の経済停滞も気掛かり。これで終息してほしい」と願った。

 今季はウイルスの量が多いとの指摘もあり、生産者の緊張はさらに高まった。市内の養鶏関係者は「農家から、やれるだけの対策を講じていても、朝に鶏舎をのぞくのが怖いとの声が聞かれる。流行時期を何とか乗り切れればいいが」。

 隣接する阿久根市も警戒を強める。園田豊農政課長は「危惧していた連続発生が起きてしまった。見えないウイルスへの怖さがある」と表情を引き締めた。12月には産業祭や市長選を控え、人が集まる会場に消毒マットを置くなど水際対策を徹底する考えだ。

 県は24日朝に対策本部会議を開き、塩田康一知事らが今後の対応を確認。県畜産課の大薗浩之家畜防疫対策監は「各農場は『いつどこで発生してもおかしくない』という意識を持ち、消毒などの防疫対策を徹底してほしい」と話した。