地域の母子保健活動に功績 鹿児島市立病院・前田医師にNHK賞 妊婦の緊急搬送にドクターヘリ活用

 2022/11/27 11:33
鹿児島市立病院の前田隆嗣産婦人科長=鹿児島市の鹿児島市立病院
鹿児島市立病院の前田隆嗣産婦人科長=鹿児島市の鹿児島市立病院
 地域に密着した母子保健活動に著しい功績を上げた人を顕彰する第44回母子保健奨励賞(公益財団法人母子衛生研究会主催)で特別賞に当たるNHK賞に、鹿児島市立病院の前田隆嗣(たかつぐ)産婦人科長(54)が選ばれた。緊急時の医師派遣や胎児治療の取り組みなどが評価された。

 同賞は1979年の創設。毎回15人ほどの奨励賞を選び、その中で特に功績が認められた人にNHK賞・毎日新聞社賞(各3人)を贈る。NHK賞受賞は県内2人目。前田さんは「とても光栄。個人ではなく病院というチームでいただいたと思っている」と話した。

 前田さんは1993年から市立病院に勤務。年250件ほど妊婦の緊急搬送を受け入れる。10年前からドクターヘリを活用。要請があった医療機関に医師を派遣し、その場で治療するなど、搬送中の死亡を防ぐ体制作りを進めてきた。

 また、2014年から一つの胎盤を共有する双子間で血流が偏る病気「双胎間輸血症候群」のレーザー治療を南九州で唯一手がける。これまで41例実施し、多くの新生児を救ってきた。

 産婦人科医を目指したきっかけは学生時代、千グラム未満の赤ちゃんが新生児集中治療室で治療を受け、一命を取り留めた姿を見たことだった。これまで約30年、周産期医療に携わり、人材育成にも力を入れる。「日本母体救命システム普及協議会」インストラクターとして、容体が急変した妊婦への救急対応を県内各地で指導する。「赤ちゃんが生まれるのは幸せなことだが、母親も助からなければ意味がない。母体の死亡ゼロにし、赤ちゃんに後遺症が出る確率を減らしたい」と抱負を述べた。

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