「ゲームチェンジャー」とされる無人機。八戸では海保が派生型を運用する。進む技術競争、「鹿屋展開は1年限り」の約束の先に何が待つ
2022/11/30 07:30

無人機MQ9B(左奥)の運用について説明する海上保安庁の担当者ら=17日、青森県八戸市の海上自衛隊八戸航空基地
海自鹿屋基地(鹿児島県鹿屋市)に配備された米空軍無人機MQ9の派生型。海保が洋上の監視を強化するため、10月から八戸を拠点に本格運用を始めた。収集できる情報は質、量とも格段に増したという。
海保は現在、排他的経済水域(EEZ)を有人航空機90機、パイロット約300人態勢で見回っている。水域は沿岸から200カイリ(約370キロ)に及び、国土面積の10倍以上。来年度以降、無人機を3機に増やし、海自とも情報を共有する方針だ。
南西地域で中国との緊張が高まる一方、青森など北方ではロシアと向き合う。海自幹部は「北の海も危機感は相当強い」と話す。
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有人機に比べ人的リスクや運用コストが大幅に低く、長時間航行できる無人機。従来の戦力差を覆す「ゲームチェンジャー」として、各国で技術競争が進む。
在日米軍基地では既に重用されている。日本で初めて展開したのは2014年、米軍三沢基地(青森県)に来たグローバルホーク(GH)。5カ月運用した後、15、18年に再び配備された。東京・横田基地でも同様に配備と撤収が繰り返されている。
日本の無人機技術は遅れており、防衛省は防衛強化策の柱の一つに掲げ開発を急ぐ。空自は先行して米国製GHを三沢に1機導入した。さらに増やす計画だが、GHは電磁波の妨害に弱いとされ、米空軍は早期に退役させる方針。このため空自配備の実効性を疑問視する指摘もある。
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関係者によると、米MQ9の国内配備は数年前から米側が打診し、遅くとも21年秋には鹿屋案が浮上した。
米側の意向を裏付けるような動きも明らかになった。米シンクタンクのミッチェル研究所が同年11月に出した報告によると、30年代にMQ9を退役させる方針の米空軍に対し、同研究所が従来の陸上から水上作戦での活用を指摘。同盟国と連携し、南西諸島周辺に配備するよう提案していた。
米空軍は今年6月、グアムなどで開いた大規模演習にMQ9を初めて投入し、米本土からの操作などを検証した。米空軍協会は、無人機部隊の指揮官が「秋までに日本の基地に恒久的な家が建てられる可能性が高い」と話したと伝えた。
鹿屋のMQ9も離陸後は米国内の部隊が2秒の時差で遠隔操縦する。「展開は1年限り」の約束の先に待つのは何か。地元の不安と米軍の注目を浴びながら、MQ9は鹿児島の上空を飛ぶ。
(連載「安保激変@鹿屋 米軍がやってきた」より)
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