知事の馬毛島基地「容認」は防衛省の見立て通り 歓迎する建設業者「元官僚が国とやり合うつもりはなかった」

 2022/12/01 11:24
西之表市馬毛島の葉山港(左)近くで建設が進む作業員宿舎(右)=8月、同島(小型無人機で撮影)
西之表市馬毛島の葉山港(左)近くで建設が進む作業員宿舎(右)=8月、同島(小型無人機で撮影)
 「馬毛島はヤマ場を越えた」。今年2月、鹿児島県西之表市馬毛島への米軍空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)移転と自衛隊基地整備計画を巡り、防衛省内にはこうした受け止めが広がった。

 八板俊輔市長が岸信夫防衛相(当時)に米軍再編交付金を受け取る意向を示し、当初の反対姿勢から黙認に転じたからだ。

 基地本体工事の入札、3000億円超の整備予算計上、日米両政府で「整備地」と決定…。昨年末から2月までに政府は矢継ぎ早に計画を推し進めた。

 ここから11月29日の塩田康一知事の容認表明に至るまで、国側の見立て通りの展開となる。八板市長は従来の抗議を封印。昨年末の基地関連工事の入札で「了承しかねる」と批判した塩田知事も、市長に同調するように黙認姿勢を強めた。

 防衛省は4月、基地整備事業の環境影響評価(アセスメント)の準備書の公表に合わせ、2022年度内の着工方針を打ち出した。8月には「国有地管理」を理由に、馬毛島東部の葉山港のしゅんせつと島内道路に着手した。

 葉山港工事を許可した塩田知事は「基地工事とは無関係」とする同省の説明を踏襲。相次ぐ入札に対し、「日常的にやり取りする中で、県の意見を取り入れてもらっている部分もある。信頼関係は築けている」との発言もあった。

 「12月議会までに方向性を示さないと、県も市も次年度が大変ではないか」。西之表市など種子島3市町に米軍再編交付金が指定された9月、同省関係者は改めて知事や市長の表明は近いと「予言」していた。

 塩田知事は容認の根拠として、同省が「アセスの知事意見に沿って対応する」と回答したことを挙げる。ただ、省側が示した知事意見への対応の概要は、FCLPの騒音など従来の説明のほぼ範囲内。知事が求めた種子島上空を飛ばない具体策などは示されなかった。

 県アセス委員で熊本大の矢野隆名誉教授は「特殊な基地を民間空港と同じように評価している」と疑問視。アセスに詳しい沖縄大学の桜井国俊名誉教授は「自然相手の影響評価は本来、春夏秋冬を通し、じっくり調査すべきだ。結論と工期ありきの内容でアセスに値しない」と批判する。

 敷地造成や管制塔、局舎など工事の業者は既に続々と決まり、建設業者は知事の容認表明を歓迎する。「基地のほかにも国の補助が必要な事業は多い。元官僚の知事が国とやりあうつもりはなかっただろう。年明け早々に着工もあるのでは」

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