世界的なツル越冬地・出水 衰弱・死んだ個体回収、初めて1000羽超す 鳥インフル拡大背景、大量死リスク浮き彫り

 2022/12/02 15:04
 鹿児島県の出水平野で死んだり衰弱したりして回収されたツルが1日、今季1039羽となり、初めて1000羽を超えた。過去最多だった2020年度125羽の約8倍で、前例のないペースとなっている。ツル同士の鳥インフルエンザウイルス感染が広がっているとみられ、これまで指摘されていた一極集中による感染症の大量死リスクが浮き彫りになった。

 11月1日に東干拓で衰弱したナベヅルが回収されたのを皮切りに、18日はわずか1日で92羽が回収された。遺伝子検査数も急増し、県は5~10羽のうち1羽程度を選ぶ抽出検査に移行。9割以上の高確率で高病原性の鳥インフルエンザウイルスが検出されている。

 イスラエルのツル生息地でも昨季、5000羽以上のクロヅルが死んでおり、鳥インフルエンザが原因とされる。出水で検出されたウイルスと近縁であることも分かっている。

 出水での感染拡大の要因として専門家が指摘するのが、ツル同士の飛沫(ひまつ)感染の可能性だ。今まではカモ類から、ねぐら水を媒介してツルに感染するとみられていた。しかし、今季はツルの体内から見つかるウイルス量が多く、体外に放出されやすい特徴がある。ねぐら水から検出されるウイルスは例年より少ない。

 出水平野には、世界に生息するナベヅルの9割、マナヅルの5割が飛来するとされ、以前から感染症まん延による大量死が懸念されてきた。分散化に向け、山口県周南市に出水から移送する取り組みは期待された成果は出ていない。今季も環境省や鹿児島県が給餌の量や場所を調整し過密化を解消しようとしているが、感染収束は見えない。県自然保護課は「現時点ではできることが限られている。ウイルスの拡散を防ぐため、迅速に死骸を回収していく」としている。

 出水では21年度、1万6840羽を観測、25季連続で1万羽を超えた。今季は鳥インフルエンザ拡大のため一度も羽数調査をしていない。