公的資金150億円を1年半前倒し完済 再出発の南日本銀行、スタートアップ支援強化へ 目指すは「中小専門の金融機関」
2022/12/14 10:44

南日本銀行
「従来の支援から一歩踏み込み、新たな産業に育ちそうな事業にも目を向けていく」。11月の会見で斎藤眞一頭取は強調した。
公的資金を完済した9月末、同時に発表したのは来春の投資専門子会社の設立だ。国から策定を求められていた経営強化計画も年度内に終了し、経営の自由度は高まる。新会社では、リスクが高く支援が限定的だったスタートアップ(新興企業)の育成や事業承継・再生支援の強化に乗り出す。
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南銀はリーマン・ショック後の09年3月期に188億円の最終赤字を計上した。財務基盤を強化し、貸し出し余力を高めるため資本注入を受け入れ、この13年余り、地域密着型金融の再構築を進めてきた。
11年に始めた新販路開拓コンサルティング「WIN-WINネット業務」は象徴とも言える。顧客ネットワークを活用して販売見込み先を紹介し、商談から入金まで見届ける成功報酬型のサービスだ。
「理念に共感してくれる農家に自力では巡り会えなかった。南銀さんのおかげ」。日置市のリサイクル業・丸山喜之助商店の丸山明紀社長(51)は感謝する。同社が手がける市民の生ごみ由来の有機堆肥「よかんど」は2年前、伊集院支店の支援で販路が広がった。
当時支店長だった営業統括部の松元郷尚上席調査役(47)は「役に立ちたいという気持ちが強かった」と振り返る。何度も同社に足を運び、事業の強みや課題への理解を深めた。同社の目指す地域内循環に興味を示しそうな事業者を選定し、引き合わせた。
農家や社会福祉法人で活用が始まり、市茶業研究会へ大口販売の道筋もついた。同社との信頼関係は深まり、私募債の引き受けなど取引が拡充した。
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顧客の成長で新たな資金需要が生まれ、良好な関係を築ければ、融資獲得を巡る金利競争に振り回されずに済む。取引先の売り上げが伸び、経営が改善すれば貸し倒れリスクが減るメリットもある。
WIN-WINネットの売り上げ支援実績は856先、金額で約85億円(22年3月末)。中小企業向け貸出残高は11年から3割近く増え、与信費用は3分の1程度に圧縮された。
斎藤頭取は会見で「顧客の経営課題に向き合わないと必要性を認めてもらえない時代が来ている」と現状を訴えた。少子高齢化が進む中、資金需要の拡大には長い目で見た地域経済の活性化が不可欠だ。
南銀は来年、創業110年の節目を迎える。長引く低金利政策に新型コロナウイルス禍も加わり、厳しい経営環境で存在感を発揮できるか。新たな挑戦に踏み出す今後、真価が問われる。
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