食材費がかさむ、寄付が集まらない…物価高騰の波が支援団体の活動直撃 子ども食堂「お腹いっぱい食べさせたいのに」

 2022/12/15 08:28
「食材もってけ市」の開場を待つ人々=10月23日、鹿児島市下荒田2丁目の県婦人会館
「食材もってけ市」の開場を待つ人々=10月23日、鹿児島市下荒田2丁目の県婦人会館
 物価高騰が生活に苦しむ人たちを支援する鹿児島県内の民間団体を直撃している。年末を控え、支援団体は「追い詰められる人が増える」と懸念。食材費がかさむ上に、寄付が集まりにくい状況が生まれており、協力を呼びかけている。

 鹿児島市の県婦人会館で10月下旬にあった「食材もってけ市」。開始前に100人以上が並んだ。大学生や専門学校生などに食品や日用品を無償提供する支援活動で、準備した200人分はすぐなくなった。鹿児島大教育学部4年の男子学生(21)は、一人暮らしで生活費はバイトで捻出する。「食材は安売りの時買って自炊する。支援は助かる」。

 会場の来場者アンケートには「週2、3日は1食だけ」との回答も複数あった。実行委員長の長野誠さん(31)は「バイトは復活したが、値上げが圧迫している」と分析する。

 もってけ市は10回目で、米や野菜は農家などの提供を受け、レトルト食品などは団体や個人の寄付で購入する。費用は約25万円だった前回の5月から約10万円上がった。今月25日に年内最後の市を開く予定だが、食材を十分確保できる募金は集まっていない。長野さんは「このままでは配布人数を減らせざるをえない」と支援の要請に奔走する。

 シングルマザーらを対象に、食材を無償配布する霧島市の「こども食堂たらの芽会」。支援を必要とする親子は絶えず、週1回の活動は130回を超えた。家庭ごとに割り当てた食材受け取り用ロッカーは、当初の30個から約60個に倍増。約185人(子ども約140人)が食材を受け取る。

 しかし秋ごろから品不足が続く。企業や農家が卵や米、野菜は提供を続けてくれているが、それ以外は不足したまま。「特に子どもの栄養の偏りが心配。余った食材があれば分けてほしい」と榊一信代表(70)。社会全体に余裕がなくなり、支援のモチベーションが下がることを懸念する。

 包装ミスや賞味期限が近いなどの理由で販売できない食品・食材を企業から引き取り、子ども食堂などに渡す「フードバンクお助けマン霧島」(霧島市)によると、県外企業の提供は減少傾向。食品ロス解消のため生産量の見直しなどが背景にあるようだ。一方で県内企業の食材提供は増加し、7割を占める。

 ただし配布先も増え、昨年の18カ所から今年は離島を含め30カ所に。値上げで福祉施設や個人の支援要請も目立つ。村上光信理事長(71)は「子どもにお腹いっぱい食べさせたい。力を貸して」と呼びかける。