安保関連3文書閣議決定 奄美、西之表、鹿屋…基地・部隊関連の街 「反撃能力必要」「どこに逃げれば」

 2022/12/17 09:03
陸上自衛隊の瀬戸内分屯地に配備されている12式地対艦誘導弾(左)=4月、奄美市名瀬
陸上自衛隊の瀬戸内分屯地に配備されている12式地対艦誘導弾(左)=4月、奄美市名瀬
 反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有などが明記された安保関連3文書が閣議決定された16日、県内の基地や部隊関連の街では賛否と困惑が交錯し、政策の大転換後の変化を注視する声が相次いだ。

 反撃能力は「12式地対艦誘導弾」を改良して保有する。現行の12式は陸上自衛隊瀬戸内分屯地(瀬戸内町)に置かれ、改良型も配備が有力視されている。同町の鎌田愛人町長は「他国が攻撃しようと思わせないために反撃能力は必要」と理解を示した上で、「外交努力もこれまで以上に図って」と注文した。

 奄美では米輸送機オスプレイなどが飛び交い、大規模演習も相次ぐ。奄美市名瀬の商店店員玉城智実さん(39)は「島が攻撃を受けたら、どこに逃げればいいのか。怖い。島民の声をもっと聞いて」と訴える。

 西之表市馬毛島への米軍機訓練移転を伴う自衛隊基地整備は着工が間際。杉為昭市議(56)は「戦争を望まないのは当然だが、反撃能力を持つことは抑止力になる」。基地整備に反対する市民団体の清水捷治さん(79)は「馬毛島が攻撃拠点になる可能性が高い。外交努力で解決すべきで、島を絡めてはならない」と危惧する。

 基地計画への賛否を保留する八板俊輔市長は「(安保関連3文書は)国会内でもいろいろな議論が出ている。行方を見据えたい」と述べるにとどめた。

 3文書では海上自衛隊哨戒機の攻撃能力の強化も明記された。海自鹿屋航空基地で米無人機の運用が始まり、米兵が駐留する鹿屋市の中西茂市長は「極めて強い関心を持ち注視する。基地の役割や運用に変容があるなら、当然、事前に説明があると考える」と話す。

 同市旭原町の松下徳二さん(84)は「物価高などで困窮する人がいるのに、政府は見ていないかのよう。本当に国を守ることになるのか」と批判。市商店街連合会の前田数郎会長(64)は「戦争が起きないための準備だろう」と受け止めつつ、「米軍が街になじんでも、安保関係の話はあまり生活とリンクしない。正直実感がわかない」と困惑した。