原因不明の体調不良、家事もままならず…長男は給食の残りを持ち帰ってくれた 水俣病近畿訴訟21日結審、原告「救済の道開いて」
2022/12/20 08:15

結審前の集会で被害者救済を訴える前田芳枝さん=3日、大阪市
阿久根市出身の前田芳枝さん(74)=大阪府島本町=は中学卒業後、就職で大阪に来た。10代のころから手足の震えやしびれがあり、指先の感覚がなかった。どこの病院でも原因は分からず「自律神経失調症」の診断。30代では、足がふらついて真っすぐ歩けなくなった。
立っても座っても横になっても、同じ姿勢を保つのがきつい。単身赴任の夫が週末に食事を作り置き、小学生の長男は学校から給食の残りを持ち帰ってくれた。字もうまく書けない。「人並みのことができないのが、とても情けなかった」と振り返る。
2013年、母親の葬儀で阿久根市の実家に戻った際、兄が水俣病の検診を勧められたと聞いた。それまで水俣病は熊本の話だと思っていた。子どものころは毎日、食事もおやつも魚。兄と同じものを食べて育ったので、ひょっとしたら自分もと思い、検診を受けた。
14年2月、民間の医療機関で水俣病と診断。「やっと病名が付いて、ほっとした」。しかし特措法の申請は1年半前に締め切られていた。
「たまたま食べた魚の中にチッソの水銀が入っていて、手足をもぎ取られたような苦しみを味わってきた。国やチッソは分かってほしい」
長島町出身の石橋英子さん(70)=名古屋市=は高校卒業後、同市で就職した18歳ごろから明け方のこむら返りに苦しむ。今は週に数回、ふくらはぎや太もも、横腹などがつる状態が数分続き、「毎回このまま死ぬんじゃないかと不安になる」。
日ごろは腕や指先、足先から尻までしびれ、階段の昇降は一段ずつがやっと。仕事ではパソコンの打ち間違いやマウスの細かい操作に悩まされる。
父親の死亡で帰省した11年11月に役場を訪れ、たまたま特措法を知った。その場で書類をもらって記入し、鹿児島県に申請したが、結果は「非該当」。後に医療機関では水俣病と診断された。
「情報がないまま苦しんでいる人はまだいるだろう。症状や魚の摂取状況を丁寧に調べて、救済の道を開いてほしい」
【水俣病特別措置法】国の水俣病認定基準より幅広く被害を認めた2004年の関西訴訟最高裁判決以降、救済を求める被害者が急増したため09年7月に成立、施行。救済対象と判断した被害者に、一時金210万円や医療費を支給するとした。12年7月末の申請期限までに鹿児島県内では1万9971人が申請、4428人が棄却された。特措法の救済から漏れた水俣病不知火患者会会員らが国などに損害賠償を求め、熊本、大阪、東京の3地裁で集団訴訟を起こしている。
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