水俣病近畿訴訟が結審、2023年9月27日判決 鹿児島出身者ら提訴8年「全員救済を」

 2022/12/22 13:30
裁判所に入る原告ら=21日、大阪市の大阪地裁前
裁判所に入る原告ら=21日、大阪市の大阪地裁前
 水俣病特別措置法の救済対象から漏れた鹿児島・熊本県出身の水俣病不知火患者会会員130人が、国と熊本県、原因企業チッソに1人あたり450万円の損害賠償を求めた訴訟は21日、大阪地裁(達野ゆき裁判長)で原告1人と弁護団が意見陳述し結審した。判決は2023年9月27日。

 原告は関西や東海などに住む51~85歳で、45人が鹿児島出身。14~19年に提訴した。水俣病特有の感覚障害などの症状を訴えている。特措法の期限内に申請できなかったり、居住地域などの要件を満たさないとして救済策の対象外とされた。

 意見陳述では原告を代表し、名古屋市の森下照美さん(60)=熊本県天草市出身=が手足のしびれや感覚の鈍さが年々強くなっていると述べた。「原告は症状のために職を失うなど経済的にも被害を受けている。高齢化が進み亡くなった人もいる。私たちの被害に真摯(しんし)に向き合ってほしい」と全員救済を求めた。

 弁護団は、原告らの出身地である八代海沿岸全域がメチル水銀に汚染され、日常的に魚を食べていたことにより水俣病になったと主張。居住地域や年齢で特措法の救済対象を線引きすることの不合理性や、疫学的知見を考慮して水俣病の因果関係を認める必要性を強調した。

 閉廷後の報告集会で鹿児島県阿久根市出身の原告前田芳枝さん(74)=大阪府島本町=は「提訴から8年、どれほど苦しんできたか。後に続く訴訟のために勝利しよう」と力を込めた。

 弁護団によると、大阪と熊本、東京の3地裁で計約1600人が係争中。不知火患者会のほかに、約150人が新潟水俣病の同種訴訟を新潟地裁に起こしている。大阪地裁の訴訟が最初の判決となる見込み。