焼酎原料のサツマイモが確保できない…基腐病、鹿児島県内メーカーに影響 販売休止や生産計画に狂い 焼き芋、スイーツ人気で取り合いも

 2022/12/23 11:06
薩摩酒造の焼酎二次仕込み作業。同社は現時点で出荷制限などの予定はないという=9月、枕崎市の「明治蔵」
薩摩酒造の焼酎二次仕込み作業。同社は現時点で出荷制限などの予定はないという=9月、枕崎市の「明治蔵」
 サツマイモが腐る伝染病「サツマイモ基腐(もとぐされ)病」が、鹿児島県内の焼酎メーカー各社に影を落としている。過去最悪だった2021年産ほどの発生ではないものの、原料の芋を十分に確保できていない。一部商品の販売休止を続けたり、生産量が計画に届かなかったりする例が出ている。

 県によると、2022年に基腐病の症状が1株以上確認された畑は3500ヘクタール。過去最悪の7686ヘクタールだった前年から半減したものの、なお35%と高い発生率が見込まれる。

 「販売休止を解消できず残念。お客さまに対して恐縮するしかない」。濵田酒造(いちき串木野市)の平石智也コミュニケーション部長(46)は苦しい胸中を打ち明ける。

 昨季は仕込み量を減らさざるを得ず、今年4月から主力銘柄「海童」の大容量品など7品の販売を休止している。今季も芋の確保は例年の8割程度。「焼き芋やスイーツ人気もあり、取り合いが起きている」

 大海酒造(鹿屋市)は収穫時期を早めるなどしたが、計画した量を確保できなかった。蔵ケ崎洋樹企画開発室長(43)によると、基腐病に嫌気が差したのか、芋の生産をやめる農家が増えた。「メーカーの競合もあって芋の価格はますます上がる。このままでは焼酎の価格に影響しかねない」と危機感を募らせる。

 「白波」などの薩摩酒造(枕崎市)も十分に芋を確保できず、今季は計画通りの生産量を達成できないという。出荷制限の予定はないが、マーケティング部の本坊直也取締役部長(36)は「芋だけでなく、さまざまな物が値上がりし、自助努力にも限界がある」。10月に全銘柄を値上げした。「引き続き安定供給に取り組む」と力を込めた。