よみがえる断食経験…「歴史語り継ぐ」 奄美群島の日本復帰69年、市民ら“無血の復帰運動”に誇り 泉芳朗の日記初公開

 2022/12/25 21:28
泉芳朗の胸像に献花する住民ら=25日、奄美市名瀬
泉芳朗の胸像に献花する住民ら=25日、奄美市名瀬
 奄美群島は25日、1953(昭和28)年の日本復帰から69年を迎えた。鹿児島県奄美市名瀬で市民らの集いや市主催の式典があり、復帰運動を主導した詩人の泉芳朗(1905~59年)の日記も初公開された。参加者は先人の情熱や功績に改めて触れ、歴史を語り継ぐことを誓った。

 復帰記念碑と泉芳朗の胸像が建つおがみ山公園では、市民団体が集いを開いた。約30人が胸像に献花し、復帰を祝った歌「朝はあけたり」などを斉唱した。

 復帰運動に加わった薗博明さん(88)=同市名瀬長浜町=は「食糧難や世界情勢を考えると、当時より今の方が激動の時代だ。先達(せんだつ)のように心を一つにし、課題解決に向けて意志を示そう」と呼びかけた。

 市民交流センターであった式典には、約160人が出席。安田壮平市長は「世界に誇れる復帰運動を次の世代に引き継ぐのは私たちの責務」と決意を述べた。金久中学校2年の吉村龍馬さんは「無血の復帰運動を誇りに思う」と語った。

 復帰前年の52年9月16日から11月13日、泉が住民の暮らしぶりや、沖永良部と与論は復帰対象外との「2島分離報道」を巡る対応などを書いた日記が式典会場で展示され、市民らは見入った。当時中学3年で集会や断食祈願を経験した才田一男さん(84)=同市名瀬矢之脇町=は「記憶がはっきりとよみがえってきた。改めて体験を語り継がなければと感じた」と話した。

 泉の日記を2014年ごろに見つけ、中身を調べたおいの泉宏比古さん(64)=神奈川県=は「公開で一区切り付き、ほっとした。いつまでも芳朗を愛していただきありがたい」と喜んだ。