【鳥インフルエンザ】鹿児島県内で過去最多12例確認 殺処分に延べ9000人の職員動員…生き物の命奪う作業、心身に負担 年末年始も厳戒態勢

 2022/12/29 21:30
鳥インフルエンザの防疫対策として続く車両消毒ポイントでの作業=28日、出水市野田町下名
鳥インフルエンザの防疫対策として続く車両消毒ポイントでの作業=28日、出水市野田町下名
 鹿児島県内の養鶏場で今季発生が相次いだ高病原性鳥インフルエンザ。過去最多の12例が確認され、殺処分など農場内の防疫措置に携わった自治体職員は延べ9000人を超えた。発生農場周辺では今も車両消毒ポイントが24時間稼働しており、国内屈指の養鶏産地は厳戒態勢で年越しを迎えようとしている。

 養鶏場で鳥インフルエンザ感染が確認されると、鶏は全て殺処分される。県はこれまでに約8200人の職員を投入し、北薩5市町(出水、阿久根、薩摩川内、長島、さつま)も約1200人を派遣。8時間交代で鶏の捕獲、炭酸ガス注入、埋却を繰り返してきた。

 生き物の命を奪う作業だけに、心身に負担もかかる。県水産振興課の榎薗一星さん(31)は「殺処分はショッキングだったけど、やるからには、できるだけ早く終わらせようと思っていた」と振り返る。

 県防疫対策マニュアルでは、肉用鶏で5〜10万羽、採卵鶏で3〜6万羽を目安に「原則として24時間以内に殺処分を完了する」とされている。ただ、今季は農場規模が想定を超えていたり、複数農場で連日確認されたりする例が続発。作業は長期化した。

 このため、同じ職員が何度も動員されるケースも珍しくなかった。県農政課の工藤聡さん(33)は「北薩での作業に計8回参加した。立て続けに発生し始めてからは『また次が起きるのではないか』という不安があった」と打ち明ける。

 自衛隊、畜産関係団体、建設業者らの協力もあり、発生農場での防疫措置は23日までに全て終わった。ただ半径10キロ内の農場に課せられた移動・出荷制限が完全に解かれるのは、最短で来年1月15日。年末年始も県職員を含む関係者が10カ所の消毒ポイントで車両消毒に従事する予定だ。

 県外養鶏場や野鳥での感染例は今も続いており、リスクが高い状況は変わっていない。県畜産課の田中和宏課長は「農家には改めて飼養衛生管理基準の徹底を呼び掛け、まん延防止に努めたい」と話した。

▼県内の鳥インフルエンザ

 今季は11月18日に出水市高尾野の採卵鶏農場で1例目が出て以降、北薩地区を中心にかつてないペースで発生が相次ぎ、これまでに12例が確認されている。12月18日には、過去発生がなかった南薩地区でも1例確認された。家畜伝染病予防法に基づく殺処分は計134万3000羽に上り、特に採卵鶏は県内飼養数の1割を超えた。

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