80食が30分で売り切れる…インドに魅了された元地域協力隊員のカレーが「本場の味」と評判 店名にするほどハマった糸紡ぎも観光客に人気

 2023/01/04 15:08
本場のインド料理が評判の岩崎泰依さん=南九州市知覧
本場のインド料理が評判の岩崎泰依さん=南九州市知覧
■岩崎 泰依さん(45)鹿児島県南九州市(東京都出身)

 都市部から地方に移住して活性化に取り組む「地域おこし協力隊」と「卒業生」が、鹿児島県内各地で活躍している。才能や経験を生かして興味深い活動をしたり、地域の隠れた魅力を掘り起こしたり。卯(う)年の幕開けに合わせ、地域を飛躍させるようと頑張る人たちを紹介する。

 毎週金曜昼休みの南九州市役所玄関前はカレーのいい匂いが鼻をくすぐる。ライスとルーを盛ったワンプレートが600円。約80食が30分ほどで売り切れる。

 2021年夏、同市地域おこし協力隊を退任した岩崎泰依さん(45)が始めた無店舗販売の「チャルカレー」。インドが好きで服飾会社の駐在員も経験した岩崎さんが作る本場の味が評判で、市外から訪れるファンもいる。

 東京で生まれ育ち、仕事も拠点は東京。「もういいか」と地方暮らしを考えたとき、協力隊の募集を見つけた。着任し与えられた任務は知覧武家屋敷庭園群を中心とした体験型観光の創出だった。

 思い付いたのが、服飾の素材として興味があった和綿を使ったもの作り体験。インドの魅力に取りつかれたのも綿花産地を訪ねたのがきっかけだった。

 武家屋敷の畑を借りて綿花を栽培。綿の収穫や糸紡ぎ、ミサンガなどの小物作り、綿繰り機を観光客に体験してもらう。物珍しさもあって人気になった。

 協力隊退任後も知覧に残る。古い一軒家を借りて、生活の支えに始めたのがチャルカレー。インドに伝わる糸紡ぎ車「チャルカ」から取って店名にした。地元野菜を豊富に使い、本場のスパイスを利かせた味は人気を呼び、イベントへの出店や配達、カレー作り教室で忙しい。それに糸紡ぎ体験教室も続けている。

 「人と話すのが好きで、食べるのも好き。好きで今の暮らしを楽しんでいる」と語る。

▼地域おこし協力隊▼
 都市部から過疎地域などへ移住し、地域活性化の事業や住民生活の支援、農林水産業に従事する。2009年度に始まった国の制度で、隊員の地域への定住・定着を図る狙いがある。任期は原則1~3年。国は隊員への報酬や活動経費として、受け入れ自治体に対し1人当たり年480万円を上限に財政支援する。