肥薩線復旧の鍵は持続可能性…「乗客を絶対減らさないで」 駅無人化、窓口縮小は「利用状況見ながら選択」 JR九州社長

 2023/01/05 10:58
報道各社のインタビューに答えるJR九州の古宮洋二社長=福岡市(JR九州提供)
報道各社のインタビューに答えるJR九州の古宮洋二社長=福岡市(JR九州提供)
 JR九州の古宮洋二社長(60)は4日までに、南日本新聞社など報道各社の新年インタビューに応じた。2020年7月豪雨で被災した肥薩線復旧に関し、持続可能性が課題とする考えを強調。乗客減が深刻な地方路線の存廃を協議する仕組みを導入する国の方針については「歓迎する」と述べた。

 八代(熊本県)-吉松の約87キロが不通となっている肥薩線の復旧を巡っては昨年、熊本県と国土交通省と検討会議が始まった。12月の第3回会合で、同社は復旧による地域全体への費用対効果や交通の在り方など六つの検討課題を提示した。その理由を「復旧費と持続可能性が問題。肥薩線はJRになってから乗客が7割以上減った。人口が減少する中、地域の将来像に鉄道がどう必要なのか。地元に一緒に考えてほしい」と説明。持続可能の基準を問われ、「ローカル線で赤字を出さないのは無理。今より乗客を絶対減らさないことが大切」と答えた。

 国は年内にも1キロ当たりの1日平均利用(輸送密度)が1000人未満の区間を対象に、存続策やバス転換を検討する協議会を設ける方針だ。同社が公表した21年度の輸送密度2000人未満の区間は18区間で、赤字総額は51億円に上る。「国の取り組みを歓迎する」と評価し、3年前から鹿児島関係の4区間で沿線自治体と活用策を協議してきた検討会について「観光は一時的。日常利用をいかに増やすかを考えていく」とした。

 鉄道事業は、効率化で本年度中にも目標の年140億円の固定費削減を達成できるとの見通しを示し、黒字化へ手応えを語った。駅の無人化や窓口縮小について「コロナ禍で収入はまだ戻らない。少子高齢化を見据え、列車本数を維持するためにやらなければいけない。安全面を最優先でやっていく」と語った。今春も考えているとして、「利用状況を見ながら駅を選択する」と述べた。

 17年の九州北部豪雨で不通となった日田彦山線の添田(福岡県添田町)-夜明・日田(大分県日田市)間は今夏、バス高速輸送システム(BRT)で運行を再開する。「ローカル線は駅間が4〜5キロと長く、駅までの足が課題になっていた。BRTの停留所は地元と協議して病院やショッピングセンターなど日常生活に合わせてたくさん設け、利便性を高めた。料金も極力、鉄道時代の運賃より高くならないようにしたい」と話した。